デートじゃないです買い出しです
部員の皆さんが学校の周りを走っている間に買い出しに行こうと校門を出たところで、ちょうど校門前を走って通過しようとしていたあっくんに鉢合わせした。
「あれ、なぎさちんどこ行くの?」
「今日はいつものお店がドリンクの粉と洗剤安売りしてるから、監督が買って来いって。私がいないからって練習サボったり先輩たちに迷惑かけたりしないでね、あっくん」
「だいじょぶだよー。いってらっしゃーい」
そうしてあっくんと別れた私は学校近くのディスカウントストアで目当ての物を大量に購入し、学校に帰ろうとしていたのだけれど。
「…なんで氷室先輩がいるんですか」
「アツシからなぎさが買い出しに行くって聞いたから。なぎさ一人で荷物持って帰るのは大変かと思って、福井先輩に頼んで迎えに来たんだ」
「そんな気遣いいらないんで練習してください」
なんて憎まれ口を叩きながらも、とても一人で持って帰ることのできる量ではなかったのでありがたく先輩に持ってもらうことにした。たまには役に立つじゃないですか先輩。
「いつも一人で買い出しに行ってるの?」
「まあ、大体は…。練習がない日だったらあっくん連れて行ったり監督に車出してもらったりしますけど、練習ある日まではさすがにそんなことできないので」
「マネージャーも大変なんだね。特にうちは強豪校なのにマネージャーはなぎさ一人しかいないし」
「選手の皆さんと比べたら全然大変じゃないですよ。それにこれは私の仕事なので」
そう答えれば氷室先輩はなぜか少し目を見開いて私を凝視した。何なの、私何か変なこと言ったかな…?
「どうしたんですか先輩、」
「…ううん、何て言うか今…。
デートっぽい雰囲気だったなって」
「はーい先輩、学校まで荷物持ったままダッシュ」
珍しく真面目な話したと思ったらこれか…。嫌だよデートなんだから手を繋ごうと訳のわからぬことを抜かす先輩の足を、ため息をつきながら思い切り踏んづけた。
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