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「君がもう少し大人になったら」の続き。










諏訪と太刀川の二人がかりで焼酎やら日本酒やらを散々飲まされた二宮は、支払いのときに財布を出そうと換装を解いた途端酔いが回ったようだった。その場に崩れ落ちた二宮を両脇から抱えて店から引きずり出した元凶の二人が、「いいか、山室に花束を渡すんだぞ」と耳元で散々言い聞かせている。
二宮の頭がガクンと落ちた。了承の意味かただ単に酔って意識を失ったのかは分からない。だがいくら酔っているとは言え、あのプライドの高い二宮が彼女に花束をプレゼントするなんて、そんなキザなことができるとは思えなかった。





つまらない真昼の住人





「で、昨日はどうだった?」

何の脈絡もなく諏訪にそう尋ねられた山室は、不思議そうな顔で「昨日…?」と首を傾げる。
ニヤニヤ、ニヤニヤ。自分を取り囲む大人たちの大人げない笑みに何か良からぬものを感じたのか、山室が若干身を引いた。どうにかしてくれと言いたげな山室と目が合ったからにこりと微笑んでやる。ごめんな、俺だって二宮がおまえに花束を渡したかどうか気になるんだよ。

「昨日の二宮くん、トリオン体のままなのにそこの二人に散々飲まされちゃって。えらく酔ってたでしょう?あのあと大丈夫だったかしらと思って」
「ああ…昨日のあれって太刀川さんたちのせいだったんですか」
「あれ?」

聞き返した太刀川はの声は喜色が見え隠れしている。山室は促されるまま答えようとしてピタリと動きを止めた。どうやら自分が墓穴を掘ったことに気付いたらしい。

「山室ちゃん、酔った二宮くんに会ったのね」
「っ、」

確信したような加古の言葉に山室の頬が赤く染まった。いや、別に、ちょっとだけ。ごにょごにょと呟きながら山室は顔を俯かせる。加古たちは面白いものを見つけたと言わんばかりに顔を輝かせて身を乗り出した。
山室は体だけでなく椅子ごと後ろに下がった。

「ねえ、二宮くん何か持ってなかった?例えば花束とか」
「はっ!?な、なんっ…!」

山室がパッと顔を上げる。その顔を見て俺たちは全員確信した。
二宮は本当に、山室に花束を渡したらしい。

「二宮さんを唆したの、加古さんたちなんですか!?」
「唆したなんて人聞きの悪い。二宮くんがキスもしたことないなんて言うからみんなで背中を押してあげただけよ」
「きっ……!?」

素っ頓狂な声を上げた山室が口元を押さえた。可哀想に耳まで真っ赤になって、完全に挙動不審になっている。
初々しいなあ。これは二宮が卒業するまでキスはしないと言い切るはずだ。なんて微笑ましく見守る俺を他所に、三人は意地の悪い顔で好き勝手山室をからかい始める。

「あら?そんな反応をするってことは、もしかして二宮くんとキスしちゃった?」
「……っし、してな」
「えー、アイツ山室が高校卒業するまでキスはしないってかっこよく宣言してたじゃん。さすがにそれはないでしょ」
「は!?」
「いやするだろ。なあ?」
「しません!!」

山室は叫ぶようにそう言って勢いよく立ち上がった。テーブルに付いた手はわなわなと震えている。さすがにからかいすぎたんじゃないだろうか。なんて、注意もせず傍観していた俺が言えた義理ではないのだが。

「大事な話だって言うから何かと思えば……!おつかいを頼まれてるのでもう行きます!」
「おつかい?あ、もしかしてにのみ」
「うるさいですよ太刀川さん!」

最後に太刀川に噛み付いて、山室はラウンジから出ていった。
まだ聞きたいことはたくさんあったのに。去っていく山室の背中を見送りながらそうぼやく加古に、あまり虐めてやるなとやんわり注意した。

title/サンタナインの街角で


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