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あなたの悪夢を終わらせたい

少年を抱きかかえて雪の中を走った。アドレナリンでも出ているのか、火事場の馬鹿力とでもいうのか。先程まで感じていた怪我による倦怠感は薄れ、今はただ医療忍者として命を救うという使命感に駆られていた。



「あっ!いた……!コラさん!ゴラ"ざん…!!」



泣きながら必死に大切な人の名前を叫ぶ少年。まだ顔も知らないコラさんとやら、生きててあげてよ。こんなに泣いてくれる小さい子供を置いていくなんて、そんなのダメだからね。



私から降りた少年が、駆け寄ってしゃがんだ場所で必死に雪をどけていた。うっすら見える赤と黒に、倒れた上に雪が積もっているのだと分かり私も必死に掘り返した。

出てきた彼の状態は酷かった。まずその巨体と不思議な化粧に驚く。そして私はこんな時にも関わらず暫しの間見惚れてしまった。彼の眠る姿が、あまりにも穏やかで幸せに満ち足りたものだったから。しかしそれも束の間、コラさん!と泣き叫んでその身体にすがり付く少年を見て瞬時に意識を切り換えた。



「僕、ちょっとどいて」

「コラさん!コラさん!!なあ頼むよ!助けて!コラさんをだすげて…っ」



帽子の上から少年の頭を一撫でして、コラさんを診る。生きてて欲しいという願いも虚しく、彼は心配停止状態だった。



「…僕、離れてて」


泣きつつも私の治療の邪魔にならないよう下がった彼は幼いながらも賢い。アカデミーの子供達はこの状況下でここまで考えを巡らせることができるだろうか。きっとこの子は、今まで他の子供とは比べ物にならない人生を送っている。そんな彼の、大切な人。拠り所となる人。


死なせない、



「絶対、助けるから…!」




───医療雷遁・心々蘇雷の術!




「!?な、なにしたんだお前…!?」


バチィ!と弾けた閃光に、少年が大声をあげる。大丈夫だから、と安心させるために微笑めば、少年は不安そうにしつつも再び後ろに下がった。


正規部隊から異動してきた私が何故医療のプロフェッショナルがトップに立つ木の葉の里で、一つの班を任されるまで登り詰めることができたのか。それは、心肺蘇生が周りより群を抜いて上手かったからだ。生来の性質である雷のチャクラは医療ととても相性が良く、私はその応用と発展に力を注いだ。


心臓の上に手をあて、そこから微弱の電流を放つ。ドクン、と彼の心臓に衝撃を与え、無理矢理血流のポンプを稼働させた。電気を流しすぎると内臓が感電しそのまま死に至り、弱すぎると中途半端な血流が詰まって血管が切れる。集中力が必要な術だが、こんな修羅場、私は幾度も潜ってきた…!



トクン、



「!きた!」



僅かに、だが確かに感じた彼の命の鼓動。直ぐ様彼に手動で心臓マッサージを施す。



「戻ってきて、お願い、」



気道を確保し呼吸を送る。しっかりと肺が膨らんでいることを確認できた。鉛玉がいくつか身体を貫通していたが、幸いにも肺には穴が開いていなかった。

再び心臓マッサージと人工呼吸を行う。少年が彼の名前を叫び、頑張れ!と声をかけている。


彼はこの子のお兄さんだろうか。家族なのかな。どちらにしろ、こんなに貴方を慕ってくれてる子に涙を流させるなんて、良い男のすることじゃないよ。だからさ、



「生きて…!」



ピク、




「!手が、手が動いた…!コラさん!コラ、さん!死なないでくれ…っ!」




根気強さと諦めの悪さで医療忍者の右に出る者はいない。最後の最後まで、私は目の前の命を助けることに全力を尽くす。



私はきっと、彼を救う為にここに来たんだ






「……ガハッ、っ、」

「!コラさあああん!!」


口から血を噴き出して咳き込む彼に、少年が抱きついた。気持ちは分かるが、私は慌てて少年を引き剥がす。



「ちょ、まってまって。今他の傷も応急処置するから、」

「!わ、わりぃ…っ」



少年が見守る横で、私は一先ず彼の出血を止めることに専念する。いくら心臓が再稼働したといっても、已然危険な状態ということに変わりはなかった。体内に残っている鉛玉はあとで取り除く。今はとにかくこれ以上血を流させないこと、そして体温をあげることだ。こんな所にいつまでもいては彼もこの子も、そして私もすぐに体力の限界がくる。



「…よし、移動しよう。僕、歩ける?」

「!?お、おい、どこいくんだ!?」

「ここに居たらいつ流れ弾が来るか分からないし、少しでも暖をとりたいから…」

「そ、そっか…って、コラさんはどうやって運ぶんだ!?おれは歩けるけどコラさんは…!」

「大丈夫、私が担ぐから」



お姉さん、こう見えても力持ちなんだよ?



一つウインクを披露して巨体の彼を肩に担いだ。驚く少年を促して、私達は安全な場所を求めて歩き出した。

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