君一路

門を細めに開けて待つ



「…知らせなきゃ」


今目の前で確認した事実を頭で分析する前に、反射的に思ったのは卯ノ花隊長への報告だった。


【裏縛道二の道、嚇々ノ御禊】

鬼道で覆った結界の中にいる人物に完全催眠をかける術だ。幻術系ではなかった藍染くんの斬魄刀に残る可能性は、操作や催眠に関係するもののはず。その仮説のもと、この鬼道を発動した。本来は敵に催眠をかけて五感を支配し翻弄する恐ろしい縛道だが、今回は対象を自分達に定めた。つまり、催眠の上から催眠し直し、自分の五感を支配下に置いたのだ。

嘘の嘘は、真




藍染くんの死体が消え、現れたのは事切れた見知らぬ死神だった。



「き、ちょ…」
「!芦矢、大丈夫?」

今の鬼道で殆どの霊力を消費してしまった芦矢は辛そうに肩で息をしていた。かくいう私も呼吸は乱れている。やはり裏鬼道の霊力消費は凄まじいものだった。


「す、んません…っ、俺まだ動けそうにないんで、先に行ってください…!俺も後から霊圧追っていきますから…、手遅れにならないうちに、はやく…っ」
「…分かった」


検死室を出て卯ノ花隊長の霊圧を探ると、ちょうど四番隊に降りてくるようだった。瞬歩で彼女の斬魄刀の上に着地する。


「!鏑木大鬼道長…どうでしたか」
「…やはり、あの死体はフェイクでした。藍染くんは…いえ、藍染惣右介は、生きています」
「それでは…」
「ええ…

この一連の騒動を裏で操っているのは、藍染惣右介だと思われます」


虎鉄副隊長がまさかそんな、と呟く。卯ノ花隊長は考え込むように目を伏せていた。


「処刑はどうなりました?」
「双極が破壊され、朽木ルキアは自由の身になりました。しかし刑が取り下げられた訳ではなく、已然隊長格が追っています」
「双極が破壊された…!?」


あれを破壊等想像もできなかったが、それよりも双極の整備に派遣した三席の班が気掛かりだった。彼らはどうなったのだろうか。そんな思いが顔に出ていたのか、卯ノ花隊長が全員回収して治療中だと教えてくれた。お礼を言って、この後の行動を考える。


「天挺空羅で報せますか?」
「そうですね、各地で戦っている隊長達を全員集めるべきです」
「しかし、まだ藍染が生きていると分かっただけで、黒幕たる証拠がないんです…」


私と卯ノ花隊長の目が合った。どうやら考えていることは同じらしい。


「…やはり、行くしかないようですね。



四十六室のもとへ」