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髪/政宗



ゴメン、政宗とはもう終わったから

授業中、考えて考えて簡潔にと選んだ言葉。
ノートの切れ端に書いたそれを小さく折りたたむ。
目指すは私の斜め前の席に座っている女の子。
えいっ、と勢いをつけ切れ端を彼女の机に投げた。

「…?」

折りたたんだ切れ端はちょうど彼女の目の前に落ちる。
彼女がそれを手にし、かさこそと広げた。


政宗との出会いはその斜め前の彼女と政宗、ふたり主催の合コン。
彼女と私、政宗とその友達を含む四対四だ。
彼女は政宗と同じ中学出身で彼は男子校へ、彼女は私と同じ共学校へと進んだ。

私は政宗をひとめ見、恋に落ちた。

でも私は何となく知っていた。
直接聞いた訳ではないけれど政宗と彼女が付き合っているということを。

こそりと交換した携帯番号とメールアドレス。
彼女に内緒で秘密のデートだって何度もした。

…それでも政宗は決まって夜八時半過ぎに電話をかけていた。
もちろん彼女に、だ。

「ああ、ちゃんと家にいるか?」
『うん…政宗は誰かといるの?』
「いや…ひとりだ」

ふたりで街を歩いていても。
ふたりでお茶をしていても。
ふたりで政宗の部屋にいても。
ふたりでベッドの上で髪を撫でられイイコトしていても。

そして政宗が私の家まで送ってくれる帰り道でも。

手短で、彼女と話している時の政宗はいつもぶっきらぼうだった。
だから安心していたの。

彼女は私の存在など知らないことに。
政宗は私のほうが好きなんじゃないかって。

それでもいつかは誰かに見られては噂になる。
クラスメートに政宗と私が腕を組んで歩いていたところを目撃されたらしい。

クラス中を巻き込んで二分する派閥。
あれやこれやと飛びかう噂話。


「お前は平気だろ?」
「…」
「アイツにはオレしか、ひとりにはさせられねえんだ」


政宗は彼女を選んだ。
最初っからふたりのなかに迷い込んだ私がいけなかったんだ。


ー翌日

私は政宗が好きだと言った、長く伸ばしていた髪を肩すれすれまでに切り揃えた。

  


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