壊れた人形


地下に続く階段は薄暗く
埃っぽかった

「いたぞ!」
「これ以上先へは行かせるな!」
神『うるさいなー』

    ドガッ
    グシャッ

先ほどから奥の方から
沸いてくるかのように襲い掛かってきた

そして最奥にある一つの扉
その扉に手をかける

    ギィィ

部屋の中には
横たわったしぐれともう一人
知らない男がいた

その男は鬼のような形相で睨んでくる
俺はそいつを一瞥し
しぐれのほうをみる

力なく床に横たわり
身体中に痣ができているのがみえた

それだけで
こいつがしぐれに暴力をふるっていたことがわかる

神『お前、しぐれになにをした』

見ればわかることだけど
気付けば口にしていた

「てめぇみてーな餓鬼に言う必要はねぇ。そもそもここに“しぐれ”って女はいねぇからな」

その言葉にカチンときた

こいつが
こいつらが許せない―…

    ドガッ

「て、てめぇ何をする!」
神『お前もしてただろ?それをやっただけだ』

その間もしぐれはピクリとも動かなかった

神『お前らは黙って俺に殺られればいいんだよ』

    グシャッ

あたりに血が舞う

神『しぐれ…』

屍と化した男を足蹴にし
しぐれに歩み寄った

神『しぐれ、起きてよ』

力なく横たわるしぐれを抱きかかえる
すると
うっすらと目を開けた

神『しぐれ』
『か、むぃ…』

か細い声で
俺の名を呼んだ

神『なに?』
『あ、り…がと


……だ…い……す…き………』

やんわりと微笑むと
やがて動かなくなった

神『しぐれっ…しぐれっ!』

何でだよ…
何でしぐれが死ななきゃいけないんだっ

初めて声を聞いたのに
初めて俺の名前呼んでくれたのに
何もかもが初めてだったのに………


れた人形
壊れた人形は
もう
もう動くことはない



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