ビターテイストにほんのりシュガー


「さて、しぐれちゃんは行ったわね」
「しぐれの本命が誰なのか気になるネ。チャラい奴にしぐれは任せられないヨ」

神楽と妙はそっと2人でしぐれの尾行をすることにした。

まずは自宅に立ち寄った。
昨日の荷物の片付けやらをしているのだろうか。
1時間ほどして自宅から出てきた。
手には紙袋が3つある。

子供が指さしてくるがそこは気にしない。

まず立ち寄ったのは万事屋だった。

「まさかここにいるアルか?」
「さあ、どうかしら…多分本命は小さい袋の中だと思うから、出てきた時にそれがあればここではなかったとわかるわね。」

暫くして出てきたしぐれの手には紙袋が2つ。
1つはあの小さい袋だ。

「ここにはいなかったみたいね」

次にしぐれが向かったのは真選組屯所だった。

「まさかあのゴリラに…」
「さすがにないと思うアルよ、たぶん。」

そうじゃないにしてもここにろくな奴は

「いないわよね」
「いないアルな」

心配だわ。何もなければいいんだけど。

そうして暫く外で待っていると早々に出てきた。
いよいよ残すところ本命と思しき袋だけだ。

「ここでもなかったみたいネ」

向かった先は公園だった。
適当なベンチに腰掛ける。

それを草の茂みから監視する2人。

「ここで待ち合わせしてるみたいネ」

日がだいぶ暮れてきた。
ちらちら時計を確認しているようだが相手は現れない。

「待ち合わせに遅刻なんて駄目ね。許されるのは女の子だけよ」
「まったくアル。会って1発殴ってやりたい気分ネ」

やがて公園内の街灯が点き始めた。

「姐御…なんだか見てて寂しくなってきたネ。しぐれ可哀想アル。」
「そうね…そろそろ呼んであげたほうがいいかしら…。」

声をかけようとした時だった
しぐれに近寄る一人の男の影が現れた。

何やら話している。
怒っているのか笑っているのか遠目からでは表情はわからない。

男の手をしぐれが取ろうとしたところで耐えかねて茂みから飛び出す。
勢いに任せて振り出した拳はいとも容易く躱されてしまった。

「なんでお前がここにいるアルか…神威!」

神威は笑顔を崩すことはなかった。
対してしぐれは、驚いた顔をしている。

「神楽ちゃんにお妙さんまで…!どうして…」
「ごめんなさい、邪魔をする気はなかったの」

妙は経緯を説明して謝罪した。
盗み見るようなことをするつもりはなかったと。
しかし神楽のほうは謝る気がないらしい。

「こんなやつと一緒にいたらしぐれもだめになってしまうヨ!」
「しぐれのこと尾行してた奴がよくそんなこと言えるね」

二人の間から険悪な空気が流れ出す。

「神楽ちゃん」
「一緒に帰ろ?しぐれは優しい、あったかい心持ってるネ。
そんなやつといたらいつかきっと冷たい人になってしまうヨ…。」

帰ろう、そう言って握った手はひどく冷たかった。
しぐれはやんわりとその手を解く。

「ごめんね、神楽ちゃん。私は神楽ちゃんが言う程善人なんかじゃないわ。
私はどうしたって悪人だよ。」

ごめんね。
もう一度小さく謝ると神楽に背を向け静かにその場を離れた。
神威もその後に続く。

神楽は後を追おうとするが妙に止められた

「なんで止めるアルか」
「今はそっとしておきましょう。相手が誰だろうと、しぐれちゃんがずっと待ってでも会いたかった人なんだから」


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