イケメン四天王 | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
「おはよー」
「おはよう」

土曜日も日曜日もアルバイト以外は家にこもっていた。月曜日はあっという間にやってくるし、本当に憂鬱。4月の終わり。少しずつあたたかくなり、新年度の初々しい雰囲気も薄れてきている。
校門を過ぎたところで友人に会い、挨拶を交わして歩幅を合わせて歩く。きゃあ、と喧しい方向に目を向ければ、背の高い2人の男と数人の女子。

「わー、すごいね」
「なに、あれ」
「3年のバレー部だねー、及川さん」
「あぁ、なんか凄く上手い人?」
「そうそう、キャプテン。うちのバレー部結構強いからね」
「…ねぇ、隣の人は?」

女の子にもみくちゃにされているオイカワさん、の近くでそれをめんどくさそうに睨むのは、多分土曜の彼だ…多分。

「あー…副キャプテンだね。岩泉さん、だったかな」

岩泉さん、と頭の中で繰り返してみる。あの時と同じよう、つんとした印象だ。今は汗もかいていないし、きちんと制服を着ているから、どこか別人みたいで自分の記憶の曖昧さを恨む。

「有名?」
「有名だよ。でも及川さんが断トツ人気。あとバレー部の3年だと花巻さんと松川さん…かな。すごい人気高いよね」
「なんで知ってるの」
「…新入生でも知ってるから。なまえが疎いんでしょ」

やっぱり、3年生なんだ。そう思って視線を逸らした。あの騒ぎだと、試合勝ったんだろうな。よかった。

「ねぇ、うちのクラスにいる?男バレ」
「え〜…あんた何組だっけ」
「6組」
「あぁ、渡くんかな」
「渡くん、」
「知らないんでしょ」
「名前覚えるの苦手なんだよ」

だいたい、6組もあって1つのクラスに40人もいて、学年に240人もいたら誰が誰だかなんて全くわからない。友人が自分のクラスでないのに把握しているのにはただただ驚くばかりだ。

「なんかあったの?」
「いや、別に」
「何もなかったら聞いてきたりしないでしょ」
「覚えてないんだよね、あんまり」
「…主語を使おうか」

高校生になったら恋ができるって、少女漫画の影響か、もしくは恋愛ドラマか、それはハッキリしないが漠然とそう思っていた。でも、現実はそんなに簡単じゃない。好きな人なんてできなかった。もちろんオイカワさんはかっこよかったけれど、あんな人気者を好きになってアプローチする勇気なんてない。サッカー部にも、バスケ部にもかっこいい人はいる。でも、好きかと聞かれると決してそうではなくて。

「好きな人ほしいなー」
「ねー、クラス替えしても全然ないよねぇ、そういうの」

ないねぇ、と相槌を打ちながら内履きに足を入れる。1時間目は数学だったような気がして、足取りが重くなるのを感じた。

2016/02/20