アカアシモリフクロウ | ナノ
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気温がぐんぐん上がる。太陽はじりじりと肌を焼き付け、冷房の効いた部屋が恋しい。
職場での彼は相変わらずで、新年度が始まってからもものすごい勢いで業績を伸ばしていた。新入社員とは思えないペース。
そのせいなのか、若干部内もピリリとしている。まぁ、当然と言えば当然のことだ。入社して間もない、言わば幼児のような社員がトップに近い位置にいるのだ。プライドの高い男ばかりだから、尚更。

「なぁ、みょうじは赤葦のことどう思ってんの」

上司にそう声をかけられた。あの、教育係。頼まれていた書類を持っていっただけなのに、そんなことを聞いてくるなんて頭がおかしいのだろうか。

「どうって、なんですか」
「何か色々一緒にやってるじゃん、イベント関係とか」

押し付けられているのだ、と正してやろうかと思ったが、誰も得をしないことは明確なのでやめた。

「やってますけど」
「どう?」
「どう?って」
「あいつ、ずっとあぁなの」

あぁ、というのは具体的に何を指すのだろうか。性関連のことに関しては情熱的になりますよ、と述べることはとてもじゃないけれど出来ないので飲み込む。

「そうですね、淡々としています。仕事と一緒で何を任せても早いし、正確です」
「ふーん、」

興味ないなら聞くなっての。もう何度こう思ったことだろうか。もう去ってもいいだろうか。

「みょうじ、あいつに興味無いの?」
「…興味ですか」
「モテるから、赤葦。他の部署で結構話題なんだよね。よく聞かれるんだよ」

なるほど、と思った。確かにまぁ、そうだろう。この部署には私しか女がいないが、比較的大きな会社だ。他の部署には私と違って“可愛らしい”OLが何人もいる。赤葦くんはルックスもいいから目立つし、この成績だし、そりゃあ話題にもなる。一応私の彼氏だ、という主張も不要であると判断した。

「かっこいいですよね」
「あ、やっぱり?それはそうなんだ」
「でも、そんなに人気あるなんて知りませんでした」
「あー、みょうじは部署内での仕事ばっかだもんなぁ。全体会議とか行くと聞かれるよ」

赤葦と同期の女の子も狙ってるって話だし、と続く。平然を装うのはこの辺りが限界だった。そして彼といたってそれがチラつく。

「え?」
「言ってたよ、あの教育係」
「はぁ、そうなんですか」

本人はこれだ。もう、演技なのかすっとぼけているのか本気なのか判断する気もない。

「同期の女の子、かわいいの」
「…かわいいんじゃないですかね」

いつもお邪魔してばかりなので、と提案したのは彼だった。私たちの住んでいる場所は比較的近く、車なら20分もあれば着く距離。公共交通機関で、となると若干複雑になり、もう少し時間はかかるが、決して遠くない距離。週末はどちらかの家に泊まるのが定番となっていた。食事は外で簡単に済ませ、彼の家にお邪魔する。

「声掛けられたりしないの」
「10回くらいですかね」
「え?」
「社食とか、あとはロビーでも何回か」

馬鹿正直なのはいいことなのかそうでないのか。ぽかんとしていると彼は続ける。

「だって、みょうじさんが構ってくれないから」
「…はぁ?」
「会社だと、冷たいじゃないですか。他の方と対応一緒ですし」
「…当たり前ですよね」
「寂しいんです、俺」

彼の部屋は無機質だった。社会人になってから一人暮らしを始めたらしいので、まだ数ヶ月しか経っていないせいか家具も荷物も最低限必要なものしか揃っていない。ブラウンで統一された面白味のない部屋。
今日も昼間から暑く、夜になってもあまり気温は下がらなかった。仕事用の洋服を纏っていると息苦しいので持参した緩いTシャツとショートパンツに着替える。彼もシンプルなTシャツとハーフパンツだ。
ソファに掛けて、私が観たいと提案した準新作のDVDを見始めようとしている時に聞いてしまったのだ。社内で随分人気者みたいですね、って。嫌味っぽく聞いた。

「みょうじさん、毎日他の男性とも話すし」
「仕事だからね」
「毎日笑顔で対応するし」
「仕事だからね」
「たまに彼氏いるんだよなぁって話題にあがるし」
「…そこは毎日じゃないんだ」

彼は私の肩に頭を預け、ちらりとこちらの様子を伺う。なんてあざとい男だろうか。まぁ22年間、このルックスで生きてきたらこうもなるか。

「こうやって週末だけですもん、ちゃんと一緒にいれるの」
「赤葦くん嫌でしょ。毎日職場でも会ってるのに仕事終わってからも会うなんて」
「嫌だなんて言ったことあります?」

じい、と見つめられ対応に困る。澄んだ瞳は無垢で美しい。彼はこちらから目をそらすことなく、露出した太ももに手を這わす。

「嫌なんです、みょうじさんが他の人と話してるのも笑いかけているのも」
「だから、仕事だって」
「だから俺も話すくらいはしますよ。話しかけられたら」
「赤葦くんのは仕事じゃないもん。逆ナンだよ」
「…だって、そうしたらみょうじさん、また嫉妬してくれるでしょう?」

ショートパンツの上からそこをじり、と刺激される。そばによるとすぐにこれだから困る…と口では言うが別に嫌ではなかった。やっぱり私もいかれている。

2016/02/19