アカアシモリフクロウ | ナノ
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「赤葦と申します。よろしくお願い致します」

わあぁ、と拍手が起きる。無駄に熱く、無駄に体育系。それが我が社。大抵の男子社員が学生時代は運動部。野球にラグビー、バスケ、柔道…。そこで腕をならしていたからだろう。飲み会は地獄絵図。普段オフィスにいる時も暑苦しくて仕方がない。永遠帰宅部だったこちらとしては冷ややかな視線を送る他ない。

そんな男ばかりなのに、我が部署にやってきたのはひょろりとした背の高い、涼しげで落ち着いた男だった。あかあし、と名乗る。桜が咲くこの季節の新入社員だった。うちの部署にはいないタイプ。なんで受かったんだろう、なんでうちに来たんだろう。色々疑問はあったが、挙手をして問う元気はない。

「今日から1週間、新入社員は纏めて下の会議室で研修だけど、一旦紹介だけ」

あかあしと名乗る彼はもう一度頭を下げてよろしくお願い致します、と丁寧に言った。静かで、大人しそうな子が入ってきたって、そのくらいだった。

「みょうじ」
「はい、」
「来週まででいいから、赤葦くんの名刺作っておいて」
「…はい、承知しました。フルネーム教えて頂けますか?」
「あー、紙ある?」

私は雑用係じゃねぇんだよ。女だからって押し付けんな。
そう反論したかったが、感情を押し殺すと決めている。こんなことくらいでルールを破る必要はない。

「はい、これ」
「ありがとうございます」
「よろしく」

赤葦京治
乱雑な文字でそう書かれていた。綺麗な名前だ、と純粋に思った。名付けた親御さんかどなたかのセンスがいいのだろう。そんなことに気を取られ、何部刷ればいいのか聞き忘れた。まぁいいや、とりあえず今は別件を終わらせなければならない。
彼の名前が書かれたメモを書類の山の頂上に放置し、仕事を進める。それをシュレッダーにかけてしまったと気付いたのは、水曜日の午後だった。

2016/01/28