さんねんごくみのくろおくん | ナノ
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秋がもうそこまできているはずなのに、体育館はむわりと暑かった。ワイシャツは背中に張り付いて不快だし、額にジワリと滲んでくる汗は鬱陶しい。何でみんな、早く気が付かないのだろうか。こんな全校集会が、何の意味ももたらさないと、そんなことになぜ、気付けないのだろうか。

「なにやるの、今日」
「壮行会でしょ、吹奏楽部準備してるし」

ステージ横では体育館の照明を浴びた金管楽器が、ギラギラと輝いていた。僕たち今日まで頑張って練習してきました、本番ではその成果を発揮できるように頑張ってきます、だから応援よろしくお願いします。そんな決まり切った台詞を聞かずとも、ちゃんと心の中でたっぷり細々と声援を送るし、敗退したって責めたりしない。コマを進めたら「へー、結構強いんだね〜」と薄っぺらい感想を述べるから、いいから、わかったから、早く、一刻も早くこの場から私を解放してはくれないだろうか。

「うちってどの部活もそんなにパッとしないからね〜、盛り上がりに欠けるっていうか」
「強かろうが弱かろうが、こんな時期に壮行会なんて単純に迷惑」
「みんなこんな熱い体育館で練習してんだよ?そう思ったらなんかさ」
「それはそうですけれども」
「勝手にやってろ、って感じ?」
「そこまでは言わないけど」
「強いて言えば男バレかな、毎回そこそこいくんだけどねー、」
「男バレってうちのクラスいるっけ?」
「いなーい、ほら、なんか一年生にいるじゃん、ハーフのさ」
「いるっけ?」
「いるよぉ、背高くてさー、モデルみたいに綺麗な顔の子」

去年同じクラスだった山本くんがそういえばバレー部だったな。そんなことを思い出しながらうじゃうじゃと集まってきた生徒たちを眺めていると、三ヶ月前までなんとなく付き合っていた部長なのにパッとしないサッカー部の先輩が目に入る。この壮行会で応援される立場の彼はユニフォームをお召しになっていて、やたらと目立った。半径三メートルほどの距離。私と別れたことは、彼に傷を付けているのだろうか。いや、全く、問題なさそうだ。サッカー部の二年に、楽しそうに絡んでいる。なんのダメージもないんだろうなと思ったし、そんな彼を見ても私は悲しくも切なくも何ともなくて、あれって、あの半年くらいの薄っぺらいあれこれって一体なんなんだろうなって、そんな気分で。

「かっこいい先輩いないかなー」
「一個上なんてタメとそんな変わんないよ」
「えぇ、そうかなぁ」
「えぇ、そうなんですよ」
「個体差あるでしょ?なまえが引き悪かっただけで」
「引き悪いってなに」
「あはは、引き悪かったじゃん。付き合ったのになーんにもなかったし」
「……一緒に帰ったもん」
「ハイハイ、手も繋がずにね、帰ったもんね」

気だるい体育館にトランペットのB♭の音が自信満々に響く。余計に暑くなった気がして、何の罪もない音の出どころを睨んだ。高校二年にもなって恋愛経験が殆ど無い自分に興醒めしている。さっさと高校生なんて終わらせてしまいたい。楽しいことなんて、校舎のどこにも、落ちていないのだから。

2017/11/27