▼01.まさぐられる


「な、なあ……まじでやんの?」
「今更尻込みするなっつの。大体俺に告白してきたの、お前だろ」
「そ、れは……そう、なんだけど」

 図らずも語尾が掠れていく俺を組み敷く圭吾の眼が胡乱に眇められ、二の句が告げなくなる。
 露骨な溜め息を吐いた彼はあっさりと身を起こし、縮こまる俺をびっくりさせた。

「けい、ご?」
「俺だって、お前が嫌がってるのを無理に奪う程落ちぶれてねえんだよ。なんつうの? 処女にありがちな心の準備ってやつ?……がまだなんだろ?」

 滅多に表に出してくれない彼なりの優しさが嬉しくて、素直にこくりと頷いた。勿論俺だって圭吾だって男なんだから、催さないわけはない。
 なのに俺を優先させてくれるそのぶっきらぼうな愛情を感じて、ひたすら申し訳なくなる。

「あ、あのっ……」
「ん?」

 圭吾はちゃんと、俺の為に動いてくれたんだ。
 それならこっちも同様に相手の為に働くのが筋だろう、俺!
 消灯済みだった部屋の電気のスイッチを入れようと立ち上がった彼に、眼を暝って精一杯譲歩する。

「俺……っあの、そーゆーの初めて、で……」
「うん」

 真っ赤な顔して俯く俺の頭をそっと引き寄せて、よしよしって撫でてくれる圭吾。ほんとに、今日はやけに紳士的だ。
 だからその優しさに背中を押されて、俺は恐る恐る言った。

「慣れない、ッけど……でも、俺、圭吾に……っだ、だだ……っ」
「……『だ』?」
「だっ……かれ、た、ぃッ!?」

 最後の一音だけ声が裏返ったのは、恋人の手により仰向けの体勢でベッドに縫い付けられたから。
 圭吾を振り仰げば、一転性欲のお盛んな高校生らしい笑みを浮かべていやがった。

「男に二言は無ェよな、瞬?」
「だ……っ騙したなてめー!」
「はん、俺が瞬に触れたくて触れたくてそれでもお前の為にと我慢してやって、家で一人虚しくヌいてたのは事実だっつの」
「ぬいっ……ッ馬鹿!」

 枕を投げ付けたけど、あっさりかわされた。
 いよいよ逃げ場が無くなった俺の耳元に、囁きが落ちて――

「ヨくしてやるよ、瞬」

 俺は諦めて、全身から力を抜いた。



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