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「な、……直くん?」
「はい? どうしたの、晃さん?」
「いや、えっと。ちょ、ちょっと待とうか。うん、落ち着こう」
「晃さん、僕は充分落ち着いてるよ?」

 きょとんと首を傾げる直くんも、ああ、やっぱり可愛い――じゃなくて!
 なんで俺は、年下の『彼氏』に両手首をネクタイで縛られているんだろう。不思議だ。ていうか、直くんのぱっと見は天使みたいな笑顔とこの状況を比較して、引き攣った笑みしか浮かばない自分自身も不思議だ。もっと抵抗しようよ、俺。

「だって晃さん、僕とエッチしたいんでしょ?」
「う、……それはまあ、否定はしないけど」
「良かった」

 あああっ、そんな、にこって形容詞が似合い過ぎる笑顔を向けないでくれ! 嬉しいけど! 前屈みになる事態だけど!
 そもそも直くん、『良かった』ってどういう意味だ。それとこの拘束とがどう関係するんだ。俺もうわかんないよ。
 混乱の只中にある俺を余所に、ソファの隣に座る直くんは間の少し開いた距離を詰めた。

「晃さん」
「ん、……っ」

 色っぽい声で名前を呼ばれ、彼の小さな両手が俺の両側の頬を挟む。
 優しく笑い、直くんは俺の唇にそれを重ねた。

「晃さん……」
「っ、直、く……」

 ただ触れ合っているだけの、子供騙しみたいなキス。
 その筈なのに、好きな子とこういう事が出来てるのが嬉しいし、彼のほうから口付けを仕掛けてくれたのも嬉しい。
 俺は正面でひとつに纏められた両手を伸ばし、直くんの制服を掴んだ。「あっ」と可愛らしい声が漏れる。

「好きだよ、直くん……」
「んっ、僕も、です」

 至近距離で互いの眼を見詰め、くすくす笑いながら囁いた。

 今日は土曜の夜。
 直くんは学校で俺は会社で、デートするのは必然的に週末になる。平日の電話やメールでのやり取りも心がほっこりして好きだけど、こうして直くんに触れられるのもやっぱり好きだ。
 夕方まで課外があるらしい大学付属の私立校はわけが違う。俺なんか、家から一番近いというだけでたかが知れた県立だったのに。あいつん家は金持ちなんだな、そういやあいつも高そうなスーツを日替わりで着て来るしな。

「直くん、ほら」
「えっ…あ!」

 キスに夢中になってむぐむぐ唇を寄せる直くんの胸元を開く。ブレザーは既に脱いでいたから、肌蹴た白い素肌が眩しい。
 それに何より、

「少し勃ってるね、乳首」


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