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「いいよ、気にしないで智季さん。回数重ねてったら、そのうち慣れるよきっと」

 穏やかに笑うその向こう側で必死に理性と戦う音が聞こえた気がしたが、それは気付かなかった振りをしてやろう。
 今度は俺の方から仕掛けてやる事にする。
 開封済みの袋から一本取って、まず自分の口に咥える。
 少し尖らせた唇ごと望月に突き出せば、望月の冷静を装っていた瞳がぎらついたのが見えた。
 ……腹の中に常に飢えた獣を飼い殺している肉食男子は、大変だな。
 望月と同類の男にも、彼らの餌食になっている女の子にも同情していると、大きな口を開けて望月が反対側を含んだ。
 今度は赤ずきんちゃんとそのお婆さんに同情している間に、俺が食い進めるまでもなく、望月が丸々一本をあっという間に食べ終えた。
 俺が慌てて自分の口の中の僅かな本体を咀嚼する端から、望月は俺の唇をぺろりと舐める。
 ――前言撤回。こいつは紳士なんかじゃない。
 しかし、そんな下半身男に惚れているのも、また事実。
 恐る恐る少し綻ばせた隙を見逃さず、望月の舌が差し込まれる。
 既に互いに嚥下していたチョコ及びスナックを探る代わり、双方の舌が触れて――俺は咄嗟に、望月の肩を押しやった。

「えー……?」

 酷く傷ついたような、望月の混乱を前面に出した声。
 前触れのない行動である点は反省するが、俺はついつい、渋面を作ってしまう。

「……煙草」
「? 煙草がどうし――あ」
「あんたなあ……俺とキスする前は、会社の人から喫煙ルームへの同席求められたとかそういう不可避な場合除いて、出来れば煙草吸わないでくれって言っただろ。……さっき俺んちの前で吸ってた時、突っ込むべきだった。あんたと会えた事に浮かれてて忘れてた俺も悪いけどな」
「ご、ごめん智季さん。つい癖で」


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