迂闊な因果
(助けて) 誰かが私を呼んでいる。救いを求め、人々が哭するその響きは私を覚醒させる。 (助けて) 枯渇する定めに星晶が嘆いている。傷む星の鼓動が私から記憶を奪う。 (助けて) (分かった分かった、助けてやるから黙れ) 瞼を薄く開けば広がる世界。穏やかな光を帯びるこの星の裏側を覗けば、儚き未来の一端を知る。 (助けてやる、か) 適当に返した言葉に情は無い。たとえ世界が滅びようとも、それは私の知ったことではないのだから。 (まあ、いいか) どうせ私は世界樹に在るだけで、自由とは無縁の身。与えられた使命は面倒だが、外に出られることを素直に楽しもうと思った。 (じゃあ、行ってくるわ) 世界を救う為ではなく、ただの傍観者として。 [*前] [栞] [次#]
|