▼ 2-2
もうずいぶん昔のことだったと思う。
お母さんとお父さんは仲良しで、
私はいつも楽しかった
草原と花畑しかないような田舎だったけど、
お友達もたくさんいた
だけどある日、お父さんがいなくなった
私もお母さんも知らない女の人と出て行っちゃったんだって
私たちは知らない町に引っ越して
それからお母さんはずっと、お父さんの帰りを待ってる
(もう帰ってこないよ、なんて言わない)
私はお母さんが大好きだから
「………なんで、あんたが帰ってくるのよ………」
だから、何言われたってへーきだよ
「なんであんたが帰ってきて……お父さんは……帰ってこないの…」
お父さん、別の女の人作ってどっかいっちゃったんだよ
「…あんたなんか産まなければよかった……なんでよ……どうしてこーなっちゃったのかなぁ………この子のせいで……お父さん……」
机の上には水の入ったコップと、精神安定剤?って云うのかな
鬱病を治すための薬が散らばっている
母子家庭で、お母さんが心の病気。
なんとか補助金で生活していける
(おこづかいはパパたちから貰ってるんだけど)
高校には行きたかったから、
勉強してなんとか授業料の安い国立の高校に入学することはできた
元々勉強は好きだし、特別頑張ったって訳じゃないんだけど
それにお母さんの面倒も見なきゃいけないし
自分の部屋に行っても灯りなんてつけない
ベッドに転がって、薄い枕に顔を埋めて、それから気が済むまで泣く
(どうしてかな、なんでこんなに寂しいのかな)
ケータイの中には、私を抱きしめて、髪を撫でて、名前を呼んで、愛を囁いてくれる人なんてたくさんいるのに
(私は独りなんかじゃないんだ)
疲れるまで泣いて、寝るだけ
(愛されて、幸せ、なのに)
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