恋愛 + ? | ナノ
 4-1



税込み110円のすっかすかのコッペパン。


これが毎日の昼食。


じゃりじゃりしたクリームが挟み込まれた安っぽいパンは、


私の本日初の栄養源となる。


(朝ご飯なんて、いつから食べてないだろう)






「一緒に食べない?」


半ば強引に私の前に座ったアルフォンスと、向かい合わせで昼食。


彼が何故そんなに私に構うのか、意味がわからない。


それがクラスから疎外された人を放っておけない、などという正義感からくるものだとしたら、


(アルフォンスの弁当は色とりどりの手作りのおかずが詰め込まれていて、)



余計に、惨めだ











「アルフォンス君」



誰からも好かれて、正義感が強くて、真面目で、優しい



昔からそうだった



でも私は違う



君のその長所のひとつひとつが私の醜さを浮き彫りにする。



(こういうのを、劣等感、っていうのかな)



だから突き放すように言った




「ごめんね、覚えてないの」


















*













それでも彼は毎日私の元へきて、


他愛もない会話をするようになった。



(クラスメイトの視線に、気付いてないわけないのに)








小さな会話のひとつひとつが暖かくて




それでもやっぱり、劣等感は消えない

















ここじゃ、私は愛されない


























「……無い………」




塩素の匂いと甲高い声で噎せ返る更衣室。


タオルも、制服も、何もかも無い。


(確かに、ここに置いたはずなのに)


ロッカーの中をいくら探しても、私の制服は見つからなかった。


クスクスと、笑い声が聞こえる。


(近くで、遠くで)





やがて更衣室には私一人が残った。


私の制服は見当たらず、


かといって水着のまま外をうろつくわけにもいかない。


暗くて、じめじめして、ひんやりと冷たかった。



無性に寂しかった。




今すぐ誰かに"愛されたい"、そんな気分だった。




涙が出た。




ばかみたいな格好で、一人で、こんな場所で、



(皮肉にも、汚い私にはピッタリだ、なんて)



肋骨の浮いた貧相な身体を抱いて、唇を噛み締めた。








「キャリー?」





どうしてかな





どうしてこんな







「キャリー!」








惨めな私を、呼ぶのだろう











彼の顔を見た途端、思いは声となって溢れ出た









「忘れてよ、もう…私は……!!」








言いかけた言葉は、口の中で消えた。






柔らかい温度に包まれる。





懐かしい色と、香り





(抱きしめる腕は強く優しい)



(おかしいな)



(パパの時は気持ち悪いのに)




(どうしてこんなに、心地良いのかな)












「………キャリー」




(耳元で聞こえる声は、優しい)







「忘れないよ、だって……」















「好き、だから」











prev / next


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -