▼ はっぴーばーす




「新しい兄弟だ」



「めん どく せー」











「………」





「「「「でか!!!!!!!!!!」」」」







……








「はっぴばーすでーつーーゆーーー…」

浮かれ気味のメランコリーがバースデーソングを歌いながら食卓の準備をしている。
浮かれ気味といっても、気持ちテンション高め?ってくらいの微妙な感じ。
無表情で歌いながら食器を並べてる光景はめちゃくちゃシュールだ。

「はっぴばーすでーでぃーーーあ……」

キッチンの奥でチーーーンとオーブンレンジが鳴った。
メランコリーはこれまた気持ち早足でキッチンへと向かう。
そして出てきた彼女は両手にミトンの手袋をつけて、やたら豪華に盛り付けられた七面鳥の丸焼きを持っていた。

「……うぃーうぃっしゅあめりくりすますうぃー…」

「あれ?!バースデーパーティーじゃなかった?!」

「あぁエンヴィーちょうど良かった手伝って」

「は?!」

「はいこれ持って…」

メランコリーが大きめの、何も盛られていない生クリームだけでコーティングされたケーキをエンヴィーに渡した。

「ちょっと何…」

「これは24cmのホールケーキだよ」

「そうじゃなくて」

「ここに18cmのホールケーキを…」

その上から一回り小さめのケーキをのせる。

「2段ケーキ」

「…あぁそうよかったね」

「机の真ん中に置いといて」

「はいはい」

シンプルな2段ケーキの真ん中に、赤いろうそくが1本立っている。
机の上には豪華な料理が揃った。
香ばしい香りが部屋全体に漂っている。

「あら、今日は一段と豪華ねぇ」

スープを注いでいたメランコリーが手を止めた。

「お祝いですからね」

「私が生まれた時にもメランコリーがいてほしかったわ」

「生まれたのが遠い昔だから誕生日とか忘れちゃったんでしょ?」

ラストの爪がエンヴィーの足の小指にクリティカルヒットした。

「おっ!今日はまた豪華なメシだなぁ」

グリードは登場するなりラストと同じ様な事を言い放った。

「はい。かなり予算オーバーです」

しかしメランコリーの返答は先程に比べてシビアなものだ。
そして続けて小声で言った。

「明日から3食芋…ですかね」

「え?!」

グリードその他全員の顔が一瞬引き攣った。
メランコリーは気が付いた様に俺をまじまじと見た。

「そういえばさっき、エンヴィーも一緒にでか!!!!!!!!!!って言ってたけど…エンヴィーの方が大きくない?」

「ほっといて」

「誤魔化しなんな」

「何弁だよ」

「さ、食事の準備ができました」

メランコリーが椅子を引く。

「本日の主役はここにお座りください」

動くのは面倒だが、呼ばれては仕方がない。
俺がゆっくりと席に着くと、兄弟皆の視線が集中した。

「新しい兄弟の誕生を祝して」

エンヴィーがメランコリーに促されて、俺の目の前にろうそくの灯ったケーキを置いた。



「おめでとう、スロウス」




喜びを感じる事すら、面倒だった。








END


……


ねぇ知ってる?
FAの世界にはクリスマスないんだよ☆





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