掌:懇願:魔法使いとヒカリ
肩に寄りかかる重みがあるときを境にことんと増して、眠ってしまったんだな、と視線を下ろした。流星群が見たい、と言い出したのは彼女だったが、牧場の朝はいつも早い。夜更かしにはあまり向かない仕事だ。
温かいココアとコーヒーを持って、中二階へ上がったときからあくびをかみ殺していた。窓を開け、夜風にそよいだ前髪の間から覗く瞳が、うとうとと眠そうだったのを思い出す。
底に少しだけココアを残したカップを指から外し、彼女を起こさないように、ほんの近くへ置いた。
「ん……」
身じろいだ腕がするりと落ちる。赤子が毛布の端を掴むみたいに、さまよった手が俺の裾を掴んで、眠る口元に笑みが浮かんだ。もう一方の手もゆるゆると、片手を追いかけて。
「……本当、困った子だな……」
雛鳥が懐いているようなものだと、分かってはいるのだけれど。どうか一度でいい、考えてみてほしい。その親鳥は本当に、君を雛だと思っているのか。
行き先を探している手を掬いあげて、そっと、掌にキスをする。
(どうか、いつか)
君が俺を、好きになってくれたらいいのに。
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