Zenith


 零であったし無限であったし、何より天に近くあって何より地を見つめていた。深く燻る眼差しの奥を、何度覗き込んだとして深淵は見えない。ただ、それでも。
「……また、お前か」
「こんにちは」
「今日は何の用だ。ああお前のことだ、用はないのか」
「何言ってるんですか。大事な用事ですよ」
「?」
「貴方に会いに来たんです」
それでも、時々その深淵が笑うから。私は更なる奥を知りたくて、到底静かになんてしていられなくなる。
「は、それが重用か。お前は可笑しな人間だ」
その奥に揺らめくものは、一体何なのだろう。慈悲か無か、或いはそんな人の言葉の枠に嵌めて口にすることのできない、何かなのか。神のみぞ知る、その何かに無性に触れたいと思うのは興味でありおこがましい同情である。私は神様に、慈悲を傾けようとしている。
「……お嫌いですか」
「ん?」
「私のことは」
それは、他のどんなものより、後戻りのできない事象を引き起こす予感がしていた。けれど構わない。世界が荒れるなら大人しくするかもしれないが、この身はどれほど傷を負ったって私の身体だ。
「……いや、そうでもない」
「!」
「不可解なものだな」
深淵が、ひどく太陽のように微笑む。私の身体、私の輪郭、私の骨、私の心。すべてを以って神話の少年のようにその近くまで飛び込んでいったら、貴方はその膜の向こう側まで、私を迎えてくれるだろうか。

ヒカリと神様



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