Tomato


 片恋が熟しきって落ちるのを眺めている。我ながら馬鹿な話だ。一度実って熟したものは誰かに摘み取ってもらうか、或いは処分するか。どちらかしか道はないというのに、捨てるには真赤に熟れたそれをただ見つめて心の底で願っている。
「おはよう、ギル!」
「あ、ああ。……おはよう、アカリ。今日も早いのだな」
「そっちこそ。ねえ、今日も後で寄っていい?」
「好きにしたらいいだろう。どうせ僕が何を言っても、来たいときに来るのが君だ」
「へへ、分かってるじゃん」
「うるさい、仕事があるんだろう」
「はいはい、行ってきます」
いつか君が、この片恋に気づいて。重力に落とされる前に、いつもの調子で笑って、掬ってくれやしないかと。愚かな考えだと思いながら、そう期待して止まないのだ。

ギルとアカリ



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