TOP > rkrn > 生物

1


「勘右衛門!三郎いるか!?」


突然襖が開かれるのは、今日でもう二度目だ。こいつらもう少し落ち着けないのかな、などと考えながら、尾浜はその人物に返事を返す。


「八左ヱ門、もっと静かに開けないと襖が壊れちゃうだろ。で、三郎ならここにいるけどどうかしたの?」

「いた!名前も!」


尾浜の返事を聞くなり瞬時に室内を見回した竹谷は、目当ての人物とその向かい側に座っている人物を見つけて室内に入ってくる。その目は怒りに燃えていて、名前を呼ばれた名前は竦み上がってしまう。


「何をそんなに怒っているんだ。名前が怯えてしまっているじゃないか。」

「あのなあ!お前が名前を無理矢理…ってあれ?」


自分が腹を立てている原因はお前だと呆れ半分に言おうとしたが、お茶とお菓子が乗った机を囲む彼らは、自分が想像していた様子とはちょっと違うようだ。
先ほど食堂で会った委員会の後輩(正確にはその友人達)に名前が鉢屋に無理矢理連れて行かれたので助けて下さいと頼まれたので、てっきり前回のように三郎が名前に悪戯をして楽しんでいると思ったのだが。


「あー、何か、悪ぃな。」

「い、いえ…」

「八ひどい私傷ついたー」

「お前の普段の行いが悪いせいだ。」


自分と彼らとの温度差を感じた竹谷は、ばつが悪そうに頭をかく。しかし無理矢理連れて来られたのは本当だと尾浜が零し、再び鉢屋を睨みつける。


「今日はまだ何もしてないって。」

「まだ、って事はこれから何かする気だったのか?お前、名前の性格を考えろよな。」


暗に極度の人見知りなんだから自重しろと含ませて、心配だから連れて行く、と名前の手を掴んだ竹谷は有無を言わせず足を進めた。


「た、竹谷先輩?」

「行くぞ名前。」


困惑して焦る名前に構わず手を引く竹谷によって閉められた襖を眺める学級委員長委員会一同。竹谷先輩が怒ったと慌てる彦四郎に、尾浜がやんわりとした笑みで大丈夫だと制する。


「大方、名字さんが三郎に怯えてたから助けたってところじゃないかな。まあ、三郎が弄りたくなるのも解るけどね。加虐心をそそるっていうか。」

「だろう?話が解るじゃないか、勘右衛門。」

「でも程々にね。ああいう大人しい子は本気で受け取っちゃうから。」


尾浜の笑みはいつもの優しいそれのはずなのに、さりげなく穏やかでない言葉が混ざっている。鉢屋といい尾浜といい、くせのある先輩方に気に入られた名前には同情を禁じ得ない。
この委員会にまともな先輩はいないのか、と彦四郎は内心溜息を吐いた。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -