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今日は厄日だろうか。校庭のやけに多い落とし穴を、解りにくい目印を頼りに避け続けていれば上から捕縛網が降ってきて、それを避けた先にある縄にひっかかれば、落ちてくる大量の学園長生首フィギュア(これが一番怖かった)

そんな数多の罠をくぐり抜け、やっと辿り着いた先は何故か作法室。くのたま長屋に戻ろうとしていたのに何故、と頭を悩ます名前の背後から、あまり聞きたくなかった声が聞こえた。


「作法室へようこそ。歓迎しますよ、名字せんぱい。」

「さ、さやま君…」


カラクリ人形の如きぎこちなさで首だけ後ろを向いた名前は、背中に冷汗が伝うのを感じた。







兵太夫とは一度会ったきりだが、一年生ながらに中々良い性格をしている彼とは、なるべくならもう会いたくなかった。

しかし兵太夫は違ったらしく、名前に会う為に三治郎と協力して校庭中に罠を仕掛け、この作法室へと彼女を誘導した。有無を言わさず中へ押し込まれた名前の前には、美麗な作法委員が全員集合していた。


「ほう、兵太夫の言っていた助っ人が以前会ったくのたまだったとはな。」

「立花せんぱい、お知り合いだったんですか?」


一番先に口を開いたのは委員長である仙蔵で、兵太夫の問いに実習中街で偶然会った事を子細説明している。話されている名前本人は事の次第を理解するのに必死でその話は耳に入らず、視界に入った綾部に天の助けとばかりに駆け寄る。


「あやちゃ…」

「名前、今の話本当?」

「え?」

「この間の合同実習で三木ヱ門と手を繋いでたって。」


頭の中が真っ白だった名前は何の事か解らなかったが、綾部が付け足した事によって今の話というのが何を指すのか理解する。そしてそれは事実であるので肯定すると、途端に綾部の表情が消える。消えるといっても端から見ればそうだというだけで、付き合いの長い名前は、それが不機嫌な時にする表情だという事をよく知っていた。


「あ・あやちゃん?何か怒ってる?」

「………………………ぎゅー。」

「え!?」


何も答えないかと思えばいきなり名前の両手をとって握りしめる綾部。突然の事に名前は驚きを隠せないが、暫くされるがままになっていると満足したらしく、綾部の表情からはいつの間にか不機嫌の色が消え失せていたので、突っ込まないことにする。


「おや。てっきり田村と好い仲かと思っていたんだが、綾部と恋仲か?」

「えぇっ!?ちちち違います!二人共そんなんじゃありません!」

「………………。」

「成る程。知らぬは本人ばかりなり、か。」

「え?」


いつの間にか二人の様子を眺めていた仙蔵の爆弾発言に思い切り否定する名前は、何か言いたそうに彼女を見つめる綾部に気付かない。その様子を見た仙蔵は、一人口端を吊り上げて愉しんでいた。

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