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放課後、名前は掃除当番のため倉庫に来ていた。この倉庫は小さいが忍たま・くのたま共用であるため、お互いが自由に行き来できる場所に位置している。同じ掃除当番のくのたまが井戸に水を汲みに行って一人になった名前は、いつ忍たまが通り掛かるかとひやひやしながら外を覗いていた。


「まだかなあ。」


名前が溜め息を吐いた直後、彼女の横顔すれすれを突風が過ぎ去った。はじめは何か解らなかったが、ゆっくりとそちらを振り向くと、信じられない光景が視界に映る。


「ひいっ!?」


倉庫の壁にめり込んだバレーボールは、その衝撃によって見るも無惨な姿へと成り果て、本来の面影は見当たらない。こんなことをするのも出来るのも、一人しかいないと、一人の人物に思い当たる。


「こ・これって、まさかいけどん委員長の……!」


もしもこれが自分に当たっていたらと想像し、肩が震え脱力する。さらにこのボールを投げた人物がここへ来てしまうかもしれないという不安から、名前の腰は完全に立たなくなり、その場に座り込んでしまった。







名前が一人ぼうっとしていると、垣根の向こうから水色が顔を覗かせた。気を抜いていた名前は驚いて小さな悲鳴を上げたが、それが一年生の忍たまだと確認すると落ち着きを取り戻す。その忍たまはきょろきょろと何かを探しているようだったが、名前と目が合うと動きを止めた。


「あ。名字名前せんぱい。」

「え?」


確かに今目の前に現れた男の子は自分の名前を呟いた。だが暫し記憶を手繰ってみても、彼の顔が出てこないので、初対面のはずだ。忍たまに知り合いなど少ないので、知り合いなら忘れるはずもないのだから、自信を持ってそう言える。


「えっ…と、」

「あ!いきなりすみません。僕一年は組の皆本金吾っていいます。あの、さっき食堂で団蔵たちにせんぱいのこと聞いて…」

「ああ、それで。」


やはり自分の記憶に間違いはなかった。先程知り合いになった団蔵と虎若は、クラスメイト達と食堂に来た際に自分を尋ねて来ていたから、きっと皆に見られていたのだろう。謎が解けたところで金吾が躊躇いがちに問いかけた。


「あの……どうかしたんですか?」

「ぅえっ??な・なにが?」

「その、せんぱいが泣いてらっしゃるので…」

「えぇっ、泣いて!?」


慌てて目元に触れてみれば、僅かだが確かに濡れている。いつ泣いたのだろうと暫し自分の身に起こった事を思い返してみた。

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