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「あ。きっとさっきのでびっくりしたから……」
「さっきの?」
「ここに立っていたらバレーボールが凄い勢いで飛んできたの。もう少しズレてたら当たってたかもしれないから。」
言いながら件のボールを指してみせれば、途端に顔を青くさせる金吾。
「すすすすすみません!!」
「どうして皆本君が謝るの?」
「僕体育委員なんですけど、そのボール体育委員長が打ったものなんです!」
焦る金吾をよそにああやっぱり、と遠い目をする名前。だが必死で謝る金吾にすぐに意識を戻し、できるだけ優しく彼を宥める。
「私は大丈夫だから気にしないで。怪我もしてないし、それに皆本君が打ったわけじゃないんでしょ?」
「たしかにそうですが…」
「なら皆本君が謝る必要ないよ。むしろこんな事で泣いて気を遣わせちゃって、私の方が申し訳ないから。」
「………………。」
未だ拭われない涙を湛えたまま、安心させようと控えめに微笑んで見上げてくる名前を見て、なぜか無言になる金吾。不思議に思った名前が声をかける前にその手を降ろし、指の側面を目尻に触れさせゆるりと名前の涙を拭き取った。
「…………っ!?」
脈絡のない行動に一瞬思考が止まるが、何があったか理解すると同時に、名前の頬が朱に染まる。
「名字せんぱいは笑顔のほうが素敵ですよ。」
「ぅあ、え?」
「だから泣かないでください。」
自分を見下ろしている金吾は真面目な顔で、本心から言っているようだ。これは慰められているのだろうか、と考えると年上として情けなくなるものの、恥ずかしさのあまり言葉を紡ぐ方法も忘れ、とりあえず頷くに留まる。
金吾はといえば素直に頷いた名前に安堵し、後ろから聞こえた声にそろそろ戻ります、と告げて去って行った。
「びっくりした……それにしても皆本君って、」
(一年生なのになんであんな男前なの!)