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竹谷、久々知、鉢屋の三人と別れた名前は、竹谷から貰った大量の饅頭を抱えて歩いていた。
(竹谷先輩、本当に大丈夫だったのかな。それにこんなに沢山…)
こんなに沢山の饅頭を買って、懐は大丈夫かと失礼ながらも気になったが、竹谷本人は気にするなと言っていたので、有り難く頂戴した。それは良いのだが、今度はその処理が問題だ。綾部と滝夜叉丸の分もあるからこの量だと言われたのだが、饅頭は結構腹に貯まるものだ。三人で食べたところで余るのは目に見えている。
「どうしよう…残すわけにもいかないし。」
昨日買ったと言っていたから、今日中には食べてしまわないと不味くなってしまうな、と頭を悩ませていると、自分のいる方向に向かってくる気配があるのに気付き、身体を強張らせる。隠れようかと考えたが、気配の主がいきなり速度を増した為に、それは叶わなかった。
ドンッ
「きゃ……わ、」
何の準備もしないまま衝撃を受けて尻餅をついてしまったが、饅頭は何とか落とさずにすんだ。ぶつかってきたものの正体を確認しようと視線を動かせば、水色に井桁模様の制服を着た小太りな男の子が、同じように尻餅をついていた。
「(一年生か、よかった)あの、だいじょう…」
「しんべヱー!」
「乱太郎、きり丸。」
「もう!急に走り出さないでよ。」
「ごめん、お饅頭の匂いがしたからつい。」
大丈夫、と言い切る前に聞こえた声に、目の前の男の子はさっさと立ち上がってしまった。この様子だと怪我はないようだと安心したが、今度はこの状態についていけない。同じ制服を着た少年が二人、後から駆け付けて自分の前で会話を始めてしまい、立ち上がるタイミングを逃してしまった。
どうしよう、今立ち上がって変に注目を浴びるのも嫌だな、でもいつまでもこの体勢なのも余計目立つし…などと思考を巡らせていれば、ふと三人のうちの一人と目があった。
「あれ、あなた確か団蔵達の…」