TOP > rkrn > 懐薫

2


「大丈夫っすか。」


名前に気付いた吊り目の少年が、上半身を屈めて手を差し出した。これは手をとれ、という事だろうか。少し考えてから、名前は少年の手をとった。そのまま腰を浮かせて立ち上がろうとした時、急に支えが無くなり、バランスが崩れてまたもや尻餅をつく。


「「……………。」」


何が起こったか理解できず、名前はただ目を丸くして吊り目の少年を見上げるが、少年もまた、同様に驚いているようだった。ややあって、少年は再び名前に手を差し出した。


「すみません、まさか素直に手をとるとは思わなくて。」


その言葉にようやく状況が理解できた。確かに、忍たまの親切などくのたまの場合、必ず疑ってかかり素直に受け入れない娘がほとんどだ。しかしそれならば最初から手など貸さなければ良いのに、という疑問は眼鏡をかけた少年によって解決した。


「なら何で最初に手を出したの。」


「いやあ、団蔵達が口を揃えて優しくて大人しいせんぱいだって言うからさ、本当かどうか確かめようと思って。」


でもこんな事されて文句の一つも言わないなんて、本当だったんだな、とまじまじと名前を眺めて呟く。


「あ、加藤君達が、って事はもしかして一年は組の?」

「猪名寺乱太郎です。」

「摂津のきり丸です。」

「福富しんべヱです。せんぱい、さっきはぶつかっちゃってごめんなさい。」

「ううん。私も、上級生なのに注意力が足りなかったから。」

「え、名字せんぱいが尻餅ついてたのってしんべヱがぶつかったせいなの!?」


円らな目を吊り上げた乱太郎に、お饅頭の匂いを辿っていったら名字せんぱいがいて、と苦笑いするしんべヱを見て、名前はいい案を思い付いた。


「福富君、お饅頭好きなの?」

「はい!大好きです!」

「しんべヱは食べ物なら何でも好きだろ。」


呆れたように言うきり丸の言葉の意味が、何となくわかる気がする。


「(饅頭の匂いなんて、持ってる私ですら解らないのに)じゃあこのお饅頭、少し貰ってくれないかな?友達と食べようと思ったんだけど、余りそうなんだよね。」


そう言って饅頭が入った風呂敷包みを目の前に掲げてみせれば、しんべヱの瞳はきらきらと輝き、口からは涎が零れた。


「貰います貰います!」

「よかったら二人もどうかな?」

「貰えるものなら何でも貰いまーす!」

「え、いいんですか?」

「うん。私達だけじゃ絶対余るけど、昨日買ってきたものだから早く食べないといけないし。」

「え、じゃあだめだ。私達今から手裏剣の練習なので、きっと今日中には食べれないです。」


中々上手くできなくて、いつも遅くまでかかるから、といって乱太郎は肩を落とした。

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