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忍術学園には生徒達が自由に罠をしかけても良い場所があり、そこを競合区域という。生徒の誰もが、というからには勿論そこは忍たまとくのたまの両方が出入りできるわけだ。その場所から塀一枚挟んだ校庭を歩いていた私は、聞き覚えのある声が耳に入り思わず立ち止まった。


「ここはまだ探してなかったよな。」

「今の声って…」


塀を登って向こう側をそっと覗けばやはり予想した通りの人物がいて、安心して声をかける。


「佐武君。」

「えっ?あ、名字せんぱい!」

「こんにちは、この間ぶりだね。」


辺りに同級生以上の忍たまがいないことを確認して、塀を乗り越え佐武君の前に降り立つ。佐武君の隣には彼と同じ制服を着た男の子が居て、こちらを見ていた。


「二人ともここで何してるの?ここら辺は競合区域の中でも一年生には危ない地帯だよ。」

「僕たち生物委員会なんですが、飼ってる虫が逃げ出しちゃったんで、探してるんです。」

「(うっ…虫かぁ)佐武君生物委員会だったんだ。君も生物委員会?」

「はい。僕も生物委員会で、虎若と同じは組の夢前三治郎っていいます。名字せんぱいの事は虎若達から聞いてます。」

「あ、くのいち教室四年の名字名前です。あの、私の事って…」

「はい、可愛くて優しいせんぱいだって!」

「そっそんなこと全然ないよ!それよりもあの…皆本君も私の事話してたみたいだけど、」

「ああ言ってましたね。」

「それってその、私が…泣いてた事、とか?」

「あれ、知ってるんですか?」

「昨日笹山君に会って、皆本君に私の事を聞いたって言ってたから。」


目を丸くする二人にやっぱり、と心中溜息をはきながら、遠回しに質問をしてみる。自分の泣き顔がか、可愛い…って言ってたって本当?なんてとても言えない。でも二人とも気まずそうな私の表情から上手く読み取って、苦笑しながら答えてくれた。


「ああ〜…多分兵太夫の言ったことは勘違いなので、気にしない方がいいですよ。」

「金吾は普通に名字せんぱいが可愛いって言ってただけなので。」

「かわ…!?そ、そっか。」


一年は組の子達は何でこうも可愛いなんて言葉をさらっと吐けるんだろう、なんて驚きながらも、どうやら皆本君は笹山君みたいな性格ではないらしくてほっとした。


「あ、虫まだ見付かってないんだよね?私も手伝うよ。」


だからここは私に任せて別の所を探しておいで、と二人を安全な方面へ送り出した。この地帯を一年生がうろつくのはやっぱりちょっと心配だから。

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