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あれは私がまだ七つの時、雪解け水もようやく乾くという頃だった。
「春になったら忍術学園へ行くよ。」
私は忍者になるんだ、そう言った彼の瞳は輝きに満ちていた。
「えっ…じゃあなまえも!なまえもいく!!」
今よりもっと人見知りが激しかった私の、たった一人の友達。ずっと一緒だと思っていた。離れるなんて考えられなかった。そしたらまた一緒だね、と笑う私に彼は少しだけ眉を下げる。
「だめだよ名前。忍術学園は十からしか入れないんだ。」
「なんで!そんなのやだ!なまえとこへ君はずっといっしょなのに!!」
私を置いて行ってしまうの、とは言えなかった。だっていつも笑顔の彼の顔が曇っていたから。
「名前。私は早く忍者になりたいからお前が十になるまで待てないけど、離れていたって私たちは友達だ。」
それ以上彼を困らせたくなくて、私は自分の気持ちに蓋をして、一生懸命涙を拭った。
「っ十になったらっ、ひっく、なまえも行くからっ…それまでは、お文っ、ちょうだいねっ?」
「!ああ、出すぞ!いっぱい出す!」
両腕を広げて大きな声をあげる彼を見て、ああやっぱり彼には笑顔が似合う、と思った。