されど解釈はそれぞれで
※6543HITフリー小説
「藤内お前なぁ…気づいたならなんで数馬に教えてやらなかったんだよ」
「それは数馬のためにならないだろ」
「そうかもしれねぇけどよ…足こんなに腫れてんじゃねえか」
「…いいよ作兵衛、藤内は僕のためにわざとやったんだ」
「…?いいのかよ?」
今日も僕、三反田数馬は罠にかかった。…当然作法委員会の罠に
ところで何故作兵衛が藤内に怒っているかなんだけど、罠に一瞬早く気付いた藤内が僕に罠があることを伝えずに自分だけ避けたことを怒ってくれているのだ。…くれている、という言い方では僕が藤内を恨んでいるみたいだけど…三年も寝食を共にしたのだ。僕は藤内がなぜそうしたのか痛いほどよくわかる。
「藤内は僕が自分から罠に気づけるようになるためにわざと教えなかったんだよ」
だから怒らないで、作兵衛、と言ったものの、作兵衛はいまいち納得出来ないみたいだ。
まぁそうだろうな
例えば自分が言わなかったことで左門や三之助が怪我をしたら作兵衛は耐えられないだろう。情に厚く面倒見がよく過保護、富松作兵衛とはそういう男なのだ。
でもそれじゃいけない。忍者になる僕達はたとえまだ忍者とは言えないようなたまごだとしても、甘やかして危険に気づけないようではやがて訪れるのは死なのだ。僕は藤内が…「僕がひとりになったとき」のためにわざとやったことを理解している。優しい藤内のことだ、目の前で仲間が怪我をすることが辛くない筈がないのに。
作兵衛だって藤内のことを分かっている。…自慢じゃないけど、僕ほど理解はしてないから意図までは理解出来ないみたいだけどね。だから藤内を責める。
どうしてそんなに辛そうなのに自分の思うままに動かないのか、僕がかわいそうだと思わないのか、と。
…いつだったか孫兵のペットが死んだのを埋めたことがあった。あれは一年だったか…あるいは二年だったか。作兵衛は感傷に浸らせる間も与えずに孫兵を立ち上がらせた。………孫兵の手を握ってただただ泣いていた僕は、その心のままに、信念のままに他人にぶつかっていける強さに、その優しさに…ひどく憧れたものだった。