文 | ナノ

彼女が俺を残して、卒業する日


 本当はずっとわかってた。彼女が、いつかは、誰かを好きになって、俺から離れていく時が来るってこと。別にそれでもいいと思ってた。彼女が幸せなら。
 だけど、それと同時に心の何処か奥底で、自惚れていたんだ。もしかしたら、俺が彼女のたった一人の相手になれるんじゃないかって。でも現実はそうはいかなくて、やっぱり彼女は俺を残して去っていくことになった。

 錫也だいすき

 そう何度も言ってくれた彼女だったけど、結局それは親友としての好きで、愛に変わることはなかったのだ。だいすきだと言われる度、嬉しくてたまらなくなった。けれど苦しくなった。いっそ残酷なほどに、彼女は俺を大切にしてくれたし、俺も彼女を大切にした。
 彼女にはたくさん助けてもらったし、俺も彼女を守るのは当然の役目だと思っていた。でも、もう明日からは俺が傍で彼女を守ってやることは出来ない。この役目は彼に渡ってしまったから。

 だからせめて、今だけは

「月子、おめでとう」

 これが、最後だと。想いをこめて、ぎゅっと彼女を抱き締めた。
 彼女はいつもと変わらずふわりと微笑んだ。俺のだいすきだった笑顔。本当に好きだったよ。さよなら月子。


___
錫也→月子
片想い。つっこの結婚式前夜くらい設定。つっこの相手は誰でもご自由に笑
title by 確かに恋だった

prev / next
[ back to top ]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -