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O5







腹がキツい。

ヘソから裂けて新しい生命が産まれそうなほどにキツい。




「食い過ぎだ。」

『ぜったい空条さんの方が食って…ッうぷ。』

「吐くならトイレに行け。」



歯も磨いたんだし、会って二日目の人の前で食い過ぎてリバースってのもヨロシクない。

なおのこと腹の苦しさにフン!フン!と鼻息を荒げていると、扉が二回ノックされた。





「来たか。」
『俺、外しましょうか?』
「いや、俺の甥だ。キミの服を届けさせた」




まさか、仗助か!!

俺は甥っ子さんよりアナタの娘さんを紹介してほしい。まだ監獄にぶち込まれる前のスタンドなんてものを知らない無垢な娘さんを紹介してほしい。
そして関係性的に承太郎が甥っ子だけどやっぱり違和感あるから叔父ってことにしてるんだね。オトナの事情だね。



仗助には俺も会わせてもらえるんだろうか。待ってるよう告げて扉を開けた彼は、二人で何やら話し込み始めた。

むむ…承太郎がデカ過ぎて仗助かどうかもワカラン!




『圏外…、』



携帯を弄ろうにもする事がない。

俺がいきなり現れた事とか、新手のスタンド使いの仕業かもだとか、大方そんな話をしてるんだろうな。



『んー…?』



この携帯は、俺が昨日持ったまま夢を見たからココにある。

俺はこの世界に携帯を忘れてったなんて有り得るんだろうか。それなら朝のバカチンが携帯に掛けたって繋がるはずもない。





でもそれって変だ。

物なんて持ち込めたんじゃ、まるで、この夢の世界が本当に存在してるみたいじゃないか。






『(夢は、夢だ。)』



少し自棄になったようにテーブルの角を蹴り上げた。無論、素足のまんま。

振りかぶりすぎて上手く蹴れずに、そのくせ丁度良く小指を強打。








『い゛ッ…!』

「自傷癖が」
『ない、ですッ…!』
「だが今」
『何か見ててムカついたんですよこのッ、角張った感じが!』




いつの間にやら俺の目の前にいた二人が揃って怪訝な顔をしてた。チクショウ

しかも仗助の方は明からさまだ。そんな顔しなくてもいいだろって程のドン引き顔!ドチクショウッ!!






「昔の引っ張り出しちゃきたけど、こりゃ小柄っつーより細ェなぁ。」




目の前まで来て俺をまじまじと見据える仗助の顔はやっぱりジョースターの血ってやつで、カッコいい、とても。

でもリーゼントを間近でゆさゆさされると吹き出しかねない。少し遠目に見てたいのが本心だ。




それから手渡された紙袋にはジーンズが三本に上着とインナーが諸々。うわ、綿パンとかと違ってジーンズは重量あるなコレ、よくぞ運んでくれたな。





『おお。わざわざ有難う、ちゃんと洗って返すよ』
「あ〜いいんスよ。もう着ねえヤツだし、必要なくなったら捨てちまって下さい。

ところで…アンタ、幾つスか?」




何その第一声どゆこと。この聞き方からするに、絶対年相応には見られてないな。

ジョジョの世界がおかしいんだよ、三部の承太郎なんて犯罪だ!制服着たオッサ…ゴメンナサイお世話になってます!!





『いくつに見えマスカネ。』

「別に未成年だからって親に連絡したりしねースよ。で、ホントはいくつスか?」

『…二十歳だよ。』




「だから」
『何て言われてもお母さんの股から這い出て確実に20年は経ってる。』

「…だそォ〜ッスよ、承太郎さん。」

「本人が言ってんだ、間違いもねえだろ。」


『‥‥‥。』
「‥‥‥。」



承太郎の言葉に、俺と仗助が同じように双眸を丸めた。



なるほどアナタが神か。
いくら言っても信用されないものと半ば諦めていた俺には、もう彼が眩しいッ!眩しくて見えないッ!!ハァン!



「なんッか腑に落ちねえよなァ…」



お前が納得できなかろうが俺がお前より長く生きている事に変わりはないのだよ。初対面でまず小指をテーブルの足に打ち付けてたからそんな感じなの?斜め上からなの?

いやしかし勝訴したような晴々とした気持ちですな。頭が高ァァい!控えおろォォォ!!!






「じゃあ俺学校あるんで。また何かあったら呼んでください」

「悪かったな。」
「構わないッスよ。アンタ、あんまり承太郎さんに迷惑掛けねーで下さいよ?」
『(俺は子供か。)うん、服アリガト!助かった。』





さて、仗助を見送ったら今度は俺達が出掛ける番だ。

おもむろにパジャマ代わりのTシャツを脱ぐと、心なしか承太郎が目を見開いたように見えた。ほんの少しだけ、たぶん。




『平たいでしょ、俺の腹筋。筋肉つかないんですよ』

「鍛えてえのか?」

『…ちょっと興味ありますけど、怖いんで遠慮シマス。』



一週間で筋肉つける特訓なんて受けたくない。

うああッ、でもその肉体美の秘密を知るチャンスだったのかもしれない…!




これでSPW財団特製薬剤なんかを使ってドーピングした結果だったらどうしよう。

そしたらもうヒーローなんて信じないわッ!!元から信じてないけどテヘへ





『‥‥‥。』

「足が余るな。」



ジーンズの裾が余った。

恥かかせやがって仗助!
俺だって座高と身長半々くらいなんだぞッ、足長めの部類なんだぞ!なのにテメッ…クッソォォ!!





「やはり仗助の物じゃあ少しデカかったな…服を買うまでの間は、裾を折って我慢してくれ。」

『折っても不恰好なパンツじゃないし十分ですよ。』



うわぁ…1999年の服ってこんなアレな感じだったかな…

そういや重ね着が生まれるか否かの、まだ小中学生が平和に上下お揃いジャージを着てた時代だもんな。




そもそもこのジョジョの世界観じゃ普通のファッションなんて存在するはずもなし!

五部のオカッパ幹部みたいな精子スーツとか渡されなかっただけ救われた。








『準備出来ました!』

「ああ、行くか。」
『はい、行きましょ!』



ウホホ、楽しみだ。


金が承太郎持ちなのは気が引けるけど、あんまり申し訳なさそうにしてたんじゃ向こうも面倒だろうしな!

男はそういうところサバッ!サバッ!としていかなくちゃな。





『あー…、』
「どうした?








…靴から買うとするか。」

『有難うございます…』





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