友達 V



「あ、あのー···広海サン···?私は一体、どこに連れていかれて」
「俺の部屋」
「はい···」

···というか、転入そうそう授業サボそれって大丈夫なの?俺の純白純情な美しい経歴に初日からサボリってやばくないか?中学まで無遅刻無欠席の皆勤賞だった俺がだよ??


「こ、これが高校デビューってやつか···!!」
「それは違うよ」


無駄にキレの良いツッコミ。次に出てくる言葉が見つからず、とりあえず運送業者に担がれる米俵気分を満喫することにした。うむ、割といいぞコレ。


「なんかくつろぎ出したところ申し訳ないけど、もうついたよ」


広海はそう言って突然俺を床に放り投げた。


「い゛っ゛···!!もっと優しく扱わないと!デリケートなんだから!」
「うるさいなぁ割るよ?早く中入って」
「バイオレンス···」


こいつ年々俺への扱いがひどくなってない?昔はもっとかわいかった···こともなかったわ。いや顔だけは女の子に間違えるほど可愛かったけど。顔だけは!な。

それにしても、マジで何もない部屋だな。家具も本当に必要最低限のものしかないようだし。男子高校生の部屋とは思えない。


「ん、あれ?1人なのか?」
「いや、初めの頃は同室のヤツいたんだけど、毎晩ヤりまくりでしまいには俺にまでセックスアピールしてきてうざいから追い出した。····そんなことより、お前さ」


とんでもないことをサラリと言って除けた広海は、部屋の真ん中にあるテーブルのイスを引き、俺をじっと見た。
──その目は、いつものやる気のない目じゃなく。真剣そのものの目で少しだけ驚く。というより正直普通にビビる。


「────花ノ下には今後一切近づくな」


うん。無理だわそれ。



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