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『 ずっと前からひろちゃんが好き 』
なんだ、つまり両想いなのか
花ちゃんとの色々ややこしい誤解が解けて、ぼくらは両想いだったってことがわかった
あのあと花ちゃんはぼくをぎゅうっと抱き締めてくれた いい匂いのする花ちゃんに抱き締められて、ぼくはとてもどきどきした 本当は、ぼくとは違う花ちゃんの柔らかい胸がぼくの身体に当たるから、恥ずかしくてどきどきしたのかもしれない
雪の降るなかだったから、すっかりぼくらは身体を冷やしてしまって、二人そろって次の日は風邪を引いた
やっと風邪が治ってぼくと花ちゃんが揃って学校に行くと、しおりちゃんはとても安心したみたいに笑ってくれた
だけど今日は終業式だったから、午前中で学校は終わってしまった ぼくと花ちゃんは一度家に帰って荷物を持ち帰ってから手持ち無沙汰でぶらぶら街を歩いていた
クリスマスだからだろうか いつもは家族連れで賑わうショッピングモールは、色んな年代の恋人同士が仲良く寄り添いながら歩いていた
花ちゃんはその光景を見ながら、また難しい顔をして考え込んでいた
ぼくは恋人たちが少し羨ましかった
ぼくも花ちゃんと両想いなんだから、ちょっとくらいラブラブしたい
ぼくは変な顔でいじけていたようで、花ちゃんはぼくを見てクスクス笑った
「ひろちゃん、腕組んでもいいよ」
花ちゃんがぼくに右腕を差し出した
「いいの?」
ぼくは、考えてたことが伝わったみたいで嬉しくなって、花ちゃんの腕にぎゅっと抱きついた
たくさんお洋服の並ぶショーウィンドウに写ったぼくと花ちゃんの姿はとても幸せそうだった
「ねぇ、花ちゃん」
「なぁに、ひろちゃん?」
ぼくより少し低い花ちゃんの背丈
「ぼく、今すごく幸せ」
ぼくを見上げる花ちゃんは天使みたいに微笑んでる
「はなも、すごく幸せ」
二人でお揃いの熊のキーホルダーを買って、プレゼントした
「お揃いだね」って笑う花ちゃんを、ぼくは心から愛しいと思った
しばらく歩いて、ぼくのお兄ちゃんが前の彼女とは違う女の子と歩いているのを見つけて二人でこっそりあとをつけたり、友達を見つけてみんなでおしゃべりしたりしていると、あっという間に外は暗くなった
手を繋いで家まで帰った
「花ちゃん、年賀状描いたけど、今年は変な絵になっちゃった」 「偶然だね、はなも不細工なお馬さんになっちゃったの」
奇遇にもぼくらは同じような失敗をしてるみたいだ そんなことさえも嬉しくてなんとなく照れ笑いしてしまった
冬休みも遊ぼうね、って約束して、花ちゃんとばいばいした
雪の降る町の夜はいつもより静かに更けていった
このとき、ぼくはまだ知らなかった
花ちゃんが、遠いところに行ってしまうということを
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