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『ひろちゃん、わたしのこと好きでしょ』
あの花ちゃんの言葉を聞いたあと、ぼくは花ちゃんの顔を見れなかった
むしろ花ちゃんのそばにいれなかった
あのときの花ちゃんの顔が忘れられない
ぼくの目をまっすぐ見つめる花ちゃん 眼鏡越しだったけど、そのとき夕陽はレンズを反射しなかった
次の言葉を聞く前に、ぼくは花ちゃんの前から逃げた 走って逃げた 全速力だった
花ちゃんはぼくの気持ちに気付いていたのか
花ちゃんはぼくのことをどう思っていたんだ
ぼくは、もうなんにも考えられなかった なんにも考えたくない
ぼくはなんにも考えられない、考えたくないから
家に向かって走った
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