06
学校に行くときは饒舌な花ちゃんだけど、帰りはそうでもない
だけど怒ってるとか、悲しいとか そういうわけじゃないみたいだ
長年隣にいるからわかる
「ねぇ、ひろちゃん」
「なぁに、花ちゃん」
花ちゃんの眼鏡が夕陽に反射するから、隣にいる花ちゃんがどんな顔をしているのかわからない それは長年隣にいるのに、わからない
「なんでもないよ」
「そっか、」
やっぱりわからない
頭のいい花ちゃんが何を考えているのか
ぼくらは花ちゃんの眼鏡みたいにきらきら反射している、眩しい川を横目に見ながら朝と同じように並んで歩いていた
花ちゃんの三つ編みお下げが揺れる 風がそよそよと吹いていて心地いい
「花ちゃん、手、繋いでもいい?」
返事を待たずにぼくは花ちゃんの白い手を取った
花ちゃんはびっくりしたみたいだったけど、はにかんだみたいに笑って、ぼくの手を握り返してくれた
花ちゃんが笑ってくれて、ぼくはとっても嬉しくなってしまった
「ねぇ、ひろちゃん」
花ちゃんがぼくを呼ぶ
「なぁに、花ちゃん」
花ちゃんはぼくを優しい声で呼んでくれる
「ひろちゃんさ、」
「うん?」
「ひろちゃん、はなのこと好きでしょ」
どうして
そんな思いでぼくは花ちゃんを見つめた
|