走って、走って、 もっと遠く、彼の瞳が見えないところまで。 心臓がうるさい、頭がクラクラする。 あぁ、気持ち悪い、吐いてしまいそうだ。 僕は、僕の体は、一体どうしたんだろうか。 あつい。 瞳が燃えるようにあつい。 あぁ、まただ。 僕の瞳からナニかが溢れる。 きっとこれは涙だ。 でも理由がわからない。 こわい。 とてもこわい。 まるで僕が僕で無くなるような気がして。 気が付けば僕は人の、いや人であったモノであろう首を片手で持っていた。 首と判断するのも危うい、どうやら強く握りすぎたらしい。 「まるで熟れたトマトみたいだ」 思わずへらりと笑みが溢れる。 黒を赤で塗りつぶす。 この赤が、この色が、僕を僕に戻してくれる。 もう涙は流れてない、頬を伝うのは真っ赤な返り血。 「カグヤ」 「やぁ…イルミ」 声が掠れた気がしたけどどうでもいい、僕は首を捨てて顔についた返り血を拭いながらイルミの方を向いた。 「此処、まだついてるよ」 「いいよ、後で包帯ごと取り替えるから」 「何かあったの?」 「何が?」 「いつもあんなことしないのに」 「あんなこと?」 「カグヤって無駄な殺しは嫌いじゃなかったっけ?」 首をコテンと曲げて不思議そうにするイルミに思わず笑いがもれた。 イルミは大人のくせに仕草や行動は子供みたいだ。 「僕は化け物だからネ」 「化け物?」 「そんなことより、イルミはどうしてここに?」 「カグヤに巻かれたから仕方なく点数集めだよ」 「あぁ、ならこれもあげるよ」 プレートを渡すとイルミは怪訝そうに顔を顰める。 もちろん相変わらずの無表情だが長年の付き合いで何となくわかる。 「僕は僕の獲物を見つけるヨ」 キルアとね、と付け足すと一気にイルミの機嫌が急降下したのが伝わってきた。 本当にブラコンだなぁ。 安定剤を噛み砕く prev / next top ×
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