「クラピカ、お前カグヤに何を聞きたかったんだ?」

レオリオの言葉にクラピカは静かに目を伏せる。
そしてその場に座ると小さく掠れた声で淡々と話し出した。

「彼女が、カグヤがあまりにも、私の知っている民族に似ていたからだ」
「民族?」
「あぁ、ユエリ族だ」
「ゆ、えり?」
「知らなくて当然だろう、彼らを知っているのはクルタ族のみだ」

クルタは太陽、ユエリは月を崇める民族。
昔クルタとユエリは一つの民族だった。
クルタ族は瞳が緋色に染まる。
そして好戦的な戦闘民族。
しかしその中にも平和主義で戦闘を好まず、緋の目を持つのを恐れる者たちがいた。
彼等は異民族と交わることでその血を薄め自らの色を変えた。そして次第に好戦的な血は薄くなり、瞳の緋色も失った。
髪は金から白に、瞳も青から白に。

人はやがて彼等をユエリと呼ぶようになり、クルタと対比して月の民族とした。

「もしかして、と思ったんだが…私の思い違いだったのかもしれない」

彼女は白と呼ぶには美し過ぎる月色だ。

なのに、どうして

どうしてこんなにも心が疼くのだろう。

私はナニを彼女に求めている?

もしも彼女がユエリなら

彼女に流れる血は私と同じ血だ。

薄くなっていようとも、同胞には変わらない。

私は嬉しいのだろうか、一人取り残された世界に仲間を見つけて。

もしも彼女がユエリなら

もしも、

「ふっ…」
「な、なんだよ、気持ちわりぃな」
「どうやら少し疲れているみたいだ、馬鹿げた考えをしてしまう。今日は此処で寝よう」

そうだ、馬鹿げた考えは捨てよう。

この世界に光など、ましてや希望などない。

あるのは薄汚れた闇に渦巻く復讐の炎のみだ。

私は血に誓って生きていく。







月に染まった兎
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