『カグヤか?』

「もしもし団長。今は二次試験が終わって飛行船の中だヨ」

『そうか。どうだ?外は楽しいか?』

「…うん、楽しいヨ。思わぬ出会いもあったしネ。でもヒソカとはちゃんと離れてるから誤解しないでよ」

『あぁ…、そうだ今シャルにかわる、団員達はお前と話したがってるからな』


しばらくの間電話をしていた。
まだ一日も離れてないのになんだかずっと会っていないような気分になるね。

ようやく電話を切る頃には僕はあの廃墟に帰りたい気持ちに包まれていた。

ホームシック?
はは、まさかね。
そんなことはあり得ない。

シャラリと懐中時計の鎖がなる音を聞きながら歩く。

その時慣れ親しんだ臭いが濃く香ることに気付いた。

あり?
こんなところで?


「キルア」

闇の中で光る銀色はビクッと肩を震わせて怯えた目で僕を見た。
見れば真っ赤に染まっている。

あぁ、まったく。

まるで昔の自分を見ているようだ。
幼く感情をコントロールできないばかりに、己の身に流れる血に逆らえない。
その血を免罪符にして、殺したことを正当化して、その上で嫌われたくないと泣いて居場所を求める。

それでも孤独に呑まれ、行き場のない手を必死に伸ばした。

そんな僕の手を取ってくれたのは団長だ。

団長が僕を僕だと認めくれた。
あの日僕は産声を上げたんだ。
団長にあって、生を知った。

だから僕も教えよう。

「大丈夫だヨ、キルア」

「な、にっが…だよ…っ」

この小さな泣き虫に。
僕なりの愛を。


「僕はキルアを嫌いにならない」

「お、れは」

”人殺しだ”その言葉を飲み込むにはまだ幼すぎる。

「僕だって人殺しだヨ」

ふわふわの銀色を撫でて瞳を覗き込む。
溢れる涙を優しく拭ってそっと上着をかけた。

「それでも僕は立ち止まれない、一度背負った業を投げ出すほど僕の罪は軽くないんだ」

それでもその小さな体がその大きな業で潰されないように。
僕はキミを受け入れる。


「いこっか」

「どこ、に」

「シャワー、血。流さないとネ」

「…ん」

何も言わないキルアの手を取って僕らは歩く。
震える手のひらを壊れないように優しく包んだ。






繋いだ手は罪の共有
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