やっと今日の試験は終わったらしい。
44名の合格者を乗せた飛行船は次の会場へと移動中。
到着は明日になるらしい。



「なあなあカグヤ、探検行こーぜ!」

「探検?」

「飛行船、こんなに広いんだからさ!探検しようよ!」

ゴンとキルアはキラキラした瞳で僕を見つめる。
キルアは本当に楽しそうだ。
こんな所は純粋に子供に見えるよ。
でも僕はシャワーを浴びたいんだけどな。


「無駄な労力は使いたくないんだヨ」

「却下!行くぞ!」

「やったぁ!行こう!」

キルアにズルズルと引きずられながら僕は渋々探検をすることになった。
一度団長達に電話したかったんだけどなぁ。
まぁいっか。

こつんこつんと僕等の足音が響く。
皆疲れてるのかこんな探検をしてるのは僕等だけらしい。

この飛行船は広い、けれど春雨の宇宙戦艦の方が何倍も広いし綺麗だ。
団長もいるしね。
そんなことを考えていると二人が騒がしく走り出した。
窓に張り付く二人を見て僕も真似してみる。

へぇ、こんな夜景はこっちの世界に来てから初めてだ。
今日の月は雲で見えない。

ゴンは夜景を見るのも飛行船にのるのも初めてらしい。
まぁキルアと僕はゾルディックの自家用機に乗ってたしなぁ。


「ねぇ、カグヤとキルアの父さんと母さんは何してる人なの?」

「殺人鬼。」

「わからない」

ゴンはポカンと僕とキルアを見た。

「キルアは、両方ともなの?」

「はは」

思わず笑ってしまった。
なんて純粋なんだろう。
僕が12歳の時は団長以外を信用することなんてなかった。
何だか毒気が抜かれるね、闇の世界にいると余計に。


「何でカグヤはわからないの?」

「父親は顔も知らないし母親は死んだヨ」

「そうなの?ごめんね、俺そんなつもりじゃ、」

「全然気にしてないヨ、僕にとっては取るに足りないことだからね」

キルアはそんなこと初めて聞いたぞと不満そうにジロッと睨んでくる。

だって聞かれないんだから答えないよ。


その後あのハンター協会の会長が現れ僕は遊ぶ気分じゃなかったからフラフラとまた飛行船内を歩き出した。

そうだ、この間に電話しよう。

首にぶらさがる懐中時計を手に取り文字盤を押す。
呼び出し音が響くとすぐに向こうから声が聞こえた。




離れて初めて寂しさを知る
prev / next

top
×