持ち物は着替えと番傘と包帯。
そして少々のお金。
食べ物はどうにかなるだろう。


「カグヤ本当に行っちゃうの?ライセンスなら俺も持ってるんだよ?」

「だからって僕が危険区域にいけるわけじゃないヨ。平気、すぐに帰ってくるから」

「試験は全然心配してないんだけど問題はヒソカなんだよなぁ」

「心配するな、カグヤに約束させたからな。シャル、あれをだせ」


団長はシャルから箱を受け取り僕の目の前で開けた。


「…時計…?」

中には金色のレトロチックな懐中時計が入っていた。
開けてみろというので蓋をあけると文字盤も見事にレトロだ。


「ただの時計じゃない、シャルに作らせた携帯電話だ。どこからでも通じる」

「それに防水は勿論寒さも暑さも衝撃にも強いよ!団長ってば三日で作れなんて無茶言うんだもん」

「試験中は時間を確認するのも大切だからな、これなら首にもかけれて邪魔じゃないだろ」

団長は首に時計をかけてくれた。
シャラリと細い金の鎖が鳴る。

「気に入ったか?」

「うん、とても…とても嬉しいヨ」

金色の懐中時計を指でなぞって微笑むと二人は何故か驚いた顔をした。
なんだろう。
でも、まぁそんなことは気にしてられないから。


「じゃあ行ってくるよ」

番傘をさして廃墟から飛び出した。


*

「へぇ、カグヤもあんな風に笑うんだね。喜んでもらえてよかったじゃん団長」

「あぁ」

「でもなんでわざわざ懐中時計なの?普通の俺みたいな電話でもなく時計でもなく」

首から下げるなんて目立つし。


「兎には懐中時計が似合う」

クロロが手にしていた本の題名、不思議の国のアリスを見てシャルナークは納得した。





金の首輪をぶらさげて
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