僕は生まれた。
僕を生んだ人は死んだ。
僕は望まれて生まれた訳じゃない。
周りの奴等は皆白かった。
僕は野蛮な血が混じってるから色が違うらしい。
僕に名前は無い。
僕は色褪せた世界で生きながら死んでいた。
何故僕が存在するのかわからなかった。
僕は世界が嫌いたった。

人が嫌いだった。

太陽が嫌いだった。

すべてが嫌いだった。

でも月だけは好きだった。
僕の周りの奴等は月を神と崇めていた。



月に照らされた夜に僕はあの人に出会った。
僕はあの人に拾われた。

そして神夜と名付けられた。


僕は泣いた。

それは僕の産声だった。
あの人に出会った日が僕の生まれた日。
僕の世界はあの人になった。
僕は誓う。
あの人のために死ぬと。


僕はあの人がいる世界を好きになった。



月の産声
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