「やぁもう来てたんだね

僕が来てから20分後、ヒソカは現れた。相変わらずヘンテコなメイクをしてる。


「遅い、おかげで身体が冷えちゃったよ。団長関係じゃなければ殺してる所だった」

「早めに来たつもりだったんだけどねまさか一時間も早く来てるとは思わなかったよ

肩を竦めた後クックックと笑うヒソカにイラっとしたがこの後団長に会えるのだから許してやった。


ヒソカに連れられて来たのは誰も近寄らなそうなボロボロの廃墟。
この中に団長が…

湧き上がる思いを抑えるように傘をギュッと握る。サラシで押さえつけられてる胸はドクドクと煩いほどに昂ぶっている。まるで殺し合いの最中のようだ。


「この中には団長だけじゃないから気を付けてね


ヒソカの言葉も無視して僕は乱暴に扉を開けた。中にはなかなか強そうな男女が数人、僕を睨んでいた。


その中に団長の姿はない、奥にいるのかな?


「ヒソカ…、アンタ久しぶりにアジトに来たと思ったら得体の知れないもん連れて来て…誰だいソイツ」


つり目のお姉さんが僕を鋭く睨み付ける。うん。なかなか僕のタイプだ。


「この子は月兎だよ団長を捜してるらしくてね

「へぇ、そいつが月兎?思ってより華奢だね」


今度は金髪の爽やかそうな青年が僕をジロジロと見てくる。
美しいものは好きだけどこの視線は嫌いだ。



「僕の事はどうだっていいだろ、ヒソカ。早く団長に」

「何を言ってるんだい?団長ならずっとそこにいるじゃないか

ヒソカが指差す方向には本をひたすら読む真っ黒な男。僕をチラリと見た瞳は何処までも深い黒で血が疼くのを感じた。



「ほう、月兎が俺に何か用か…?」

「違う…」


お前は、団長じゃない。


「ヒソカ、コレは僕の団長じゃない」

「おや、とんだ団長違いだったんだね


団長じゃない。
その事実を受け入れるや否や一気に喪失感に襲われる。
楽しみにしていた分若干の苛立ちも混じえて。


「帰る」

ひらりと方向転換すると目の前に真っ黒で小柄な男が立ち塞がる。


「団長が帰る許可出してないね、それに蜘蛛のアジト来て無事帰れる思たか?」


あぁ、こういうパターンか。



とんだ団長違い
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