キミを守る方法
「ハーマイオニー、最近キミよく図書室に行くね」
ロンの言葉にぎくりと揺れた肩を誤魔化すように咳払いをして彼女はわざとらしく嫌味な声を出した。
「あのねぇ、ロン。誰かさんがいっつもレポートを見せてくれっていうでしょ?だから私も沢山知識を増やすために」
「あー、悪かったよハーマイオニー、キミってなんて素晴らしいんだ」
手のひらを返すようにぺこぺこしだしたロンを見てホッとしながらも彼女は笑った。
彼との関係は誰にもバレてはいけない。
もしもバレたら、きっと
グイッと髪を思い切り引っ張られ彼女は思わず顔を顰め、引っ張る張本人を睨んだ。
「なんでこんなところに箒があるのかと思ったら、グレンジャー。キミの髪だったのかい」
意地悪く笑うドラコを睨みつつもその後ろに立つ彼を見て彼女はバッとドラコの手を振り払い髪を直す。
「おお怖い怖い、そんな顔で睨まないでくれよ。だいたいそんな箒みたいにごわごわした髪でいるほうが悪いじゃないか」
「何か用?スリザリンってとってもお暇なのね」
「いや?ウォーズリーの馬鹿な声が耳障りで苦情を言いに来たんだ」
「なんだと!」と応戦するロンとハリーを横目に彼女は俯く、彼と仲良くなってからこの喧嘩する時がとても嫌いになった。
心優しい彼が何を思ってるのかと考えてると胸が苦しくなった。
いつだって彼はドラコが満足して早く帰れるように喧嘩を終わらせる役だ。
「ロン、こんな奴相手にすることない」
「こんな奴?随分派手にでたなポッター、グレンジャーに気でもあるのか?」
絡みつくようなドラコの視線を無視して彼女は羽根ペンをとってレポートを仕上げようとするがそれはドラコによって遮られた。
「マグルは羽根ペンなんて使い辛いだろ?無理するなよ」
「ちょっと!返して!」
「ふん、こんな安物が大切か?」
「マルフォイ!ハーマイオニーに返さないと許さないぞ」
杖を構えたハリーを見てドラコは少し怒ったように羽根ペンをウェルに投げ渡す。
「見ろよ、この羽根ペンの色。ウェルの髪色と同じだ」
ドラコはわかっていた、こんなことを言えば彼がどんな反応に出るのか。
そして彼女も、ドラコに煽られ彼がどんな役を演じなければいけないのかわかった。
だからこそ、それを避けようとウェルに手を伸ばし羽根ペンを取り返そうとしたが、その手は彼によって振り払われた。
「俺に気安く触るな」
冷たい瞳が彼女を侮蔑する。
いつもの優しい、キラキラ輝く瞳はどこにもない。
「ドラコ、こんなものを俺に渡すな。同じ色なんて最悪だ…」
彼はグッと力を入れ羽根ペンを曲げる。
「やめて!」とすぐに彼女が奪う。
羽根ペンは少しだけ曲がっていたが使えないほど壊れてはいなかった。
これはきっと彼が加減してくれたと彼女は思い、それを誤魔化すように「酷い…」と泣いたフリをした。
「何するんだよ!その羽根ペンはハーマイオニーのお気に入りなんだぞ!」
「おっと、ウェルに近づくなウィーズリー。行こう、馬鹿共が騒いだら面倒だ」
ドラコは本当は彼によって羽根ペンが壊され、ぐちゃぐちゃになるのを望んだが、少ししか曲がってない羽根ペンに不満気な表情を見せる。
が、彼女が泣いたのを見て満足そうにグリフィンドールのテーブルを後にした。
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