もう一時間ぐらいこの部屋にいるけどなんやかんや綿毛は俺を追い出さないでぶつくさ文句を言いながら話し相手になってくれている。

どうやらここの屋敷に軟禁状態で育ったらしく外から来た俺の話が珍しいらしい。



「そのシンって国は何が有名なんだよ」

「シンつっても広すぎていろんな民族がいるからな、俺のとこは茶と拳法が有名だ」

「へぇー…、その拳法覚えたらイルミにも勝てるようになる?」

「んー、どーだろーな。でもお前素質あるからいいとこいくんじゃねぇの?」

素質ある、そう言った瞬間綿毛は嬉しそうな顔をしたあと複雑そうに顔を顰めた。


「別に俺は殺し屋になりたいわけじゃない」

呟くように小さい声でもこんな部屋じゃ耳には入る。
なんだ、こいつ普通にまだまだ子供じゃないか。
冷めたガキかと思いきや意外と純粋。


「ふーん、なら殺し屋じゃないのになれば?」

「はぁ!?無理に決まってんだろ?家を見てみろよ!狂ってんだこの家!俺がこの家を継ぐのはもう生まれた時から決まってんの!」

綿毛はなんだか切羽詰まったような、なんというか何かに耐えているギリギリの表情で叫ぶ。

情緒不安かよ。


「なんだそりゃ。お前の人生だろ?お前で決めろよ」


俺は普通のことを言っただけなのに綿毛はうっすら涙目のようになって唇をぐっと結んだ。


「なぁ泣いてんの?」

「泣いてねぇ!」

「涙声だけど」

「泣いてねぇ!こっち見んな!つーか今日会ったばかりのお前なんかに俺の何がわかるんだよ!」

だって、お前それは

「まあ俺も後継者として育てられたからな、そのうち逃げるけど」

「逃げる?」

綿毛はポカンと俺を見る。なんだ年相応の顔もできんじゃん。


「押し付けがましいのは嫌いなんでね、面倒になったらバイバイ」

あんなクソ親父なんて知らねーしな。

そう言うと綿毛はクスッと笑った。


「なんだよそれ、お前、本当に自由だな」

「あ?なんだよ綿毛のくせに。お前の方が自由にふわふわ飛ぶんだろ」

「綿毛って呼ぶな!俺はキルアだ!名前で呼べよ」

「キルア?」

「お前、ロアだろ?」

頷けばキルアは俺の拳に自分の拳を当ててきた。


「嫌な奴かと思ったけど、俺もお前嫌いじゃないぜ!宜しくな」

ニカッと笑ったキルアは今日一で可愛くて、思わず髪をぐしゃぐしゃした。

とりあえず俺のお気に入り決定。


(その笑顔は反則で)


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