あれから月日は経ち私は11歳になった。
あの赤い髪の男の子との事は夢だったのかもしれないと思った。

でも、今首につけている赤い石がついたネックレスが夢ではないと証明している。

名前も思い出せない男の子。

出来る事なら、もう一度会いたい。



11歳の誕生日。
私にホグワーツから手紙が来た。

お母様は喜んで入学に向け準備を始めた。

お父様は何も言わなかった。


きっとお父様にとっては"当たり前"の事なのだから。


私の入学に必要な物を買いに行くとき、お父様とお母様がついてきて下さりお父様が全て買い揃えて下さった。


中でも大変だったのは杖だ。

なかなか決まらず、お父様がイライラし始め私は困り果てていた。


その時、一つの杖が目に入った。

店主に渡され振ってみれば店中を薔薇の花弁が舞う。


「素晴らしい、お決まりですな」


店主がニコリと笑いながら杖の説明をしてきた。

マタタビの木にシャ・ノワールの尻尾。32cm。

シャ・ノワール、猫の使い魔ね。
つくづく私は猫に縁があるようだ。


明日、ホグワーツに入学する。

私は部屋で一人緊張していた。
ホグワーツは全寮制。

入学した後はお父様にもお母様にもドラコにも休暇の時にしか会えなくなってしまう。


とても淋しい。

ふと、部屋の扉が遠慮がちに叩かれた。


「姉上、僕です」

ドラコの声が扉越しに聞こえた。

「ドラコ…、入って」

さっきまで緊張していたのが嘘のように心が綻んだ。

ドラコ、私の可愛い弟。


入って来たドラコは今にも泣きそうな表情をしていた。


「どうしたの?」

「い、………て……か…?」


ドラコは目線を合わせずに俯きながらボソッと何かを言ったが、聞き取れなかった。


「…え?なぁに?」

「一緒に、寝てもいいですか?」


赤くなるドラコを見て、愛しい気持ちが溢れる。


「もちろんよ、さぁいっらっしゃい」

私のベットはキングサイズだ。

二人が寝ても十分に広い。

私とドラコは向き合うようにベットに入った。

「姉上の入学は嬉しいですが………寂しくなります」

「手紙を書くわ、それに私は毎日ドラコを思ってるわ」

「本当ですか?」

「えぇ、だってドラコはたった一人の私の可愛い弟だもの」


そう言えばドラコは私に抱き付いて来た。

泣いているみたいだ。


「必ず手紙を書くわ、それに休暇には必ず帰ってくる。ドラコが入学するまでの我慢よ、入学した後はずっと一緒じゃない。ね?」


私と同じ色のドラコの髪を撫でながら私は囁いた。

「は、い」

そしてドラコは私の腕の中で眠ってしまった。



*

キングス・クロスに着くと私は両親とドラコの方に振り返った。


「お父様、お母様。行って参ります。ドラコ、行ってくるわね」

「リンクスちゃん、お手紙書くわ」

お母様は涙ぐみながら優しく抱き締めてくれた。


「姉上、体調に気を付けて下さい」

昨日たくさん泣いて甘えたせいか、お父様がいるせいかドラコは泣くのをこらえ涙ぐみながら言った。

私はドラコを優しく抱き締めた。


「いってくるわ、ドラコ」

そして最後にお父様を見た。


「…マルフォイ家の名に恥じる事はするな。」

お父様はそれだけ仰ると姿くらましでお母様とドラコと共に消えた。


道化師の愛


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