その日はホグズードの日だった。
生徒達も皆どこか楽しそうにソワソワしている。

ハニー・メープルはその日ハニー・デュークスで新発売の飲めるキャンディを買い、包みを開けるのに夢中だった。

何せ買った味は期間限定らしく今日を逃したらもう出逢えないかもしれないからだった。


広い廊下も今はホグズードから帰る人でごった返していたが、皆ハニーを気遣い避けてくれていた。


彼女が包みを開けながら友人のルーナと歩いていれば、向かいから巨大2人を引き連れたプラチナブロンドが歩いて来た。


プラチナブロンドは自慢話に夢中らしく前を見ていなかった。


瞬間、彼女とプラチナブロンドはぶつかり、彼女の飲めるキャンディはプラチナブロンドの顔やローブにかかった。


「あっ」

「うわっ、何だコレは!」


彼女は一口も食べれなかった飲めるキャンディの末路に呆然とした。


「おい!お前いったいどこ見て歩いてたんだ!」


廊下にプラチナブロンドの怒鳴り声が響いた、みんな何だ何だと2人に注目する。

そんな中に彼女の知り合いもいた、親友のジニーの兄達とその親友達。


彼等はハニーを妹のように可愛がっていたので助けようと2人に近付いて来た。


「私の、飲めるキャンディが…」

怒るプラチナブロンドに比べ何とも気の抜けたような声が響いた。


「人の心配よりお菓子の心配か、お前知ってるぞ。意地汚くて有名なハッフルパフの3年生だろう」


意地悪に笑うプラチナブロンドの言葉は一切ハニーには聞こえなかった。


彼女は飲めるキャンディの味が何だったのかだけ考えていた。


「上級生の4年生にこんな事をしたのに詫びの1つも出来ないのか?僕が誰だか知らないのか?スリザリンのドラコ・マルフォイだ」


プラチナブロンド改めドラコ・マルフォイが高らかに名前を名乗った。

だがやはり彼女には聞こえていない。

しかしドラコには見えていた、ハニーを助けようとこちらに向かってくる気に食わない奴らが。


ドラコが気に食わないウィーズリー家の人間やハリー・ポッター、ハーマイオニー・グレンジャーがハニーと仲がいいのをとドラコは知っていた。

なので見せ付けるように罵りはヒートアップした。


「おい、聞いているのか。本当に卑しい奴だな、そんなに食べたいなら這いつくばって舐めればいいんだ」


彼の言葉にスリザリン生から笑いが洩れた。


そして彼女はゆっくりと動き、

ペロリと 彼 の 唇 を 舐めた。

舐めたと言うより彼女の唇と彼の唇は重なった。


皆何が起きたのかわからず、その場の空気が固まった。


「い、きやぁあああああああああ!!!!」


ドラコの悲鳴が甲高く響き、彼は真っ赤になってその場から逃げ出した。


予想外の彼女の行動と、予想外の彼の悲鳴に観衆の反応は様々だった。


中でもウィーズリー家の双子がゲラゲラと腹を抱えて笑っていた事しかドラコは認識出来なかった。


「何味だった?」

「蜂蜜!」


今さっきまであった出来事をまるで気にしてないのかルーナは味を問い掛けた。

その問い掛けに彼女も気にせずさらりと嬉しそうに答えた。


彼女にしてみれば味がわかれば良かったのだ。


ファーストキスは蜂蜜味。
prev / next