夕餉時、カチャカチャと食器の音だけが響く。相変わらず静かな冷たい家だわ。


ちらりとドラコを見れば暗い表情で口には運ばずカチャカチャとただ肉を切っている。


「どうした、ドラコ。食欲がないのか」


お父様の声にはっとドラコは首を振る。

「いいえ父上、汽車に長く乗っていたので少し疲れがでただけです」


そうかとまた先程と同じように静かな部屋に戻る。お母様が目配せをお父様にするとお父様は咳払いをし手を置いてドラコを見た。


「ドラコ、付き合っている女性はいないのか?」


突然の質問にドラコは戸惑いを隠せずに固まってしまった。それを見て父上はいないのだと確信して笑みを浮かべる。


「お前もそろそろ年頃だ。お前にふさわしい相手を、と思っていた」


悪い虫がつく前に婚約者を。父上の考えそうなことだ。


「お父様、ドラコはとても女子生徒に人気がありますわ。ドラコに選ばれて嫌がる女の子などいません」


ちらりとお父様を見れば少巌しい顔をして顎をなぞる。考え事をする時の癖だ。


「先にローズにと思ったがお前は嫁ぐ身、マルフォイ家を去ってしまう。嫁ぎ先には困っていない。お前ほどの器量ならどこの家も歓迎するだろう。若い頃のナルシッサによく似ている・・・本当に」


お母様は少し照れた様子で微笑むと私にそっと囁いた。


「お父様はあなたが貰われていくのが嫌なのよ」


クスクスと笑うお母様につられて私も笑う。

「とにかく、ドラコの相手はだいたい検討がついている」


ドラコは驚いた様子でお父様を見た。


「ローズ、お前ならドラコに相応しい」


蜜の香りに誘われて

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