「いやはや、めでたいですな」

「ブラック家の後継者がいたとは」

今日はローズ・ブラックの正式なお披露目とドラコとローズの婚約式だ。純粋に祝福する者もいればマルフォイ家にローズをとられてしまったことを悔しがる者もいる。


当の本人達はまだローズの部屋だ。


「ドラコ、もうすぐ時間よ」

ベットに座り俯くドラコの横に腰かけそっと膝に手を置く。


「嫌だったわよね、実の姉みたい存在と婚約させられるなんて」


その言葉にドラコは顔を上げまっすぐローズを見つめた。


「嫌なんかじゃありません、ただ昨日の今日で整理がつかなくて」

「簡単な話よ、私達姉弟じゃなくてはとこだったの」


ニコリと微笑む姉上を見てきっとこの人はとっくの昔に気付いたのではないかと思った。


ずっと姉上が好きだった。シスコンなんかじゃない。1人の女としてずっと焦がれて焦がれて。嫉妬していた。血が繋がっていなくて姉上と恋に落ちることができる男に。その気持ちを隠すように姉上に似た女達と付き合って気を紛らわそうとしても頭の中は常に姉上のことばかり。

自分は異常なんだと思った。

でももう平気だ、堂々と姉上に愛を囁くことができる。


「姉上」

「ドラコ、もう姉上じゃないの。それに敬語もやめて」

「わ、わかった。ローズ」

「なに?」

「ディゴリーはいいのか?」

僕の問いかけに姉う、ローズはきょとんと不思議そうに首を傾げた。

「どうしてセドリック?」

「付き合っていると言ったじゃないか」

そう言えばローズはクスクス笑いだす。


「私は付き合ってるなんて一言も言ってないわ。ただその噂がスリザリンまで広がったのねって言っただけよ」

「じゃあ実際は」

「ただのお友達」

ドラコは安心して気が抜けたのかトスンとベットに寝そべる。

「ふふ、やきもちでも妬いてくれたのかしら?」

悪戯っぽく笑うローズにドラコは不貞腐れたようにそっぽを向く。

「当たり前だ、僕はずっとローズが」

言葉を遮るようにキスをされた。固まるドラコにローズは優しく微笑みかける。

「知ってるわ、だってお嫁さんにしてくれるんでしょう?」

そっとローズの後頭部に手を添えまたキスをする。

「僕が守るよ、ローズ」


キスをしながら思った、ディゴリーに送り付けた大量の糞爆弾と呪いの手紙はキャンセルできないかな?



*


そっと同じ色のドラコの髪を撫でる。やっとこうなれた。作戦は成功したみたい。野心家のお父様のことだもの、完璧にしていれば手放さないのはわかっていた。追い込むためにセドリックとの噂がお父様の耳に入るようにわざと泳がせたのが正解だったみたい。


マルフォイ家なんて嫌いだった、息苦しいし与えられる愛情は偽り。完璧じゃなければ愛されない。

でもドラコだけは違った。無償の愛を私にくれた。ただのローズを愛してくれた。
私の可愛い弟、私の可愛い旦那様。ドラコの傍にいるために邪魔者は排除してきた。ドラコに余計なことを吹き込む乳母を追い出すために自分で肌を傷つけ髪を切ったりもした。


愛する人を手に入れるためなら悪魔にもなってみせる。



手に入れたこの幸せ、二度と離さない。


美しい薔薇には棘がある。
薔薇の棘は悪魔の爪なのかもしれない。


傷から浸食したようだ

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