「ドラコ」

マーガレットと歩いていると後ろから優しい姉上の声が聞こえた。慌てて組まれていた腕を解き振り返る。


「姉上、」


姉上は僕とマーガレットを交互に見てニコリと微笑んだ。


「彼女ができたんですって?」



最悪だ。今までは隠しとうしてきたのに。


「フレッドとジョージに聞いたの!えっと」

くそ、あの双子か。余計なことを。絶対に許さないからな。ウィーズリーへの恨みは後で晴らすとしてこの状況をどう切り抜けようか。



「マーガレットですわ、お姉さま」

「マーガレット!ドラコを宜しくね」


マーガレットと姉上が微笑みながら握手を交わす。姉上の笑顔を見て少し胸が苦しくなった。



「ドラコとお姉さまって素敵ね!私仲良くなれ」

「別れよう」

シンと静かな廊下に僕の声だけが響いた。マーガレットは理解できてないのか大きな瞳をさらに見開いた。



「ど、どうして?さっきお姉さまに紹介したばかりじゃない!それに付き合ってまだ1ヶ月も経ってないわ!」

「紹介したわけじゃない。君が勝手に名乗ったんだろ。1ヶ月もしないうちに嫌になったんだ。別れてくれ」



バチンと乾いた音を響かせてマーガレットは瞳から大粒の涙を零して走って去っていく。

ヒリヒリと痛む頬をさすりながらまるで人ごとのようにのんびりと考えた。


さっきマーガレットと姉上が並んだ時に僕は落胆したんだ。姉上に比べるとマーガレットの髪色はどこかくすんでいたし、瞳も姉上のほうが澄みきって美しいアイスブルーだ。なによりマーガレットはくせっ毛でふわふわしている。姉上はサラサラのストレートだ。



だからキミじゃダメなんだ。


やっぱり僕は


チクリと棘が刺さった

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